「無意識の思い込み」気づいた子に起きた劇的変化 「アンコンシャスバイアス授業」導入じわり増

誰もが持つ「アンコンシャスバイアス」とは?
2021年10月下旬、神戸市立美賀多台小学校では、4~6年生を対象にオンラインによる道徳の授業が行われた。各教室に設置されたモニターには、「ある人の予定」が映し出されている。「みんなはこの予定を見て、どんな人を思い浮かべますか?」と、講師の守屋智敬氏が遠隔で呼びかけると、「あんな人」「こんな人」と元気な声が返ってきた。

守屋氏が「実はこの人は……」と誰のことかを明かすと、子どもたちからは「えー!」と驚きの声が広がった。「このように無意識の思い込みは誰にでもあります。これこそが誰もが持っている『アンコンシャスバイアス』(以下、アンコン)です」と説明すると、子どもたちは一様になるほどという表情を浮かべていた。
クイズと2〜3人の小グループによるディスカッションを挟んで、アンコンの授業は進んでいく。この日、子どもたちが学んだアンコンは、次の5つ。
・正常性バイアス:「私は大丈夫だ」と思い込むこと
・確証バイアス:「〇〇に違いない」と思い込むこと
・集団同調性バイアス:周りに合わせてしまうこと
・無理バイアス(インポスター症候群):「私なんかどうせ無理」と思い込むこと
このほかにも心理学の研究では200種類以上の認知バイアスが確認されているというから驚きだ。
授業では、「自分のアンコン」について考えるほか、アンコンに気づくとどんなことが起こるかについても、グループで話し合い発表した。例えば、アンコンに気づくメリットとしては、友達が増える、差別やいじめがなくなる、みんな仲良くなれるといった声が上がった。逆にアンコンに気づかないデメリットは、いじめや差別、けんかが増える、誤解を招くなどの意見が多く出た。
新たな価値を創造し、持続可能な社会を実現するカギ
守屋氏は、リーダーシップやキャリアデザインなどの研修や講演を行うコンサルティング会社の代表取締役だ。高校生の頃から心理学、とくに「無意識」に興味があったという。コンサルティングでも無意識の影響について扱ってはいたが、アンコンに深く興味を持ったきっかけは、プライベートの体験にある。

一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 代表理事、株式会社モリヤコンサルティング 代表取締役。管理職や経営層を中心に8万人以上のリーダー育成に携わる。アンコン研修の受講者は5万人超、セミナーは企業や自治体のほか、「がん治療と就労の両立」「被災地の皆さんにむけて」「小・中学生にむけて」など、さまざまな角度から提供。著書に『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント 最高のリーダーは自分を信じない』『シンプルだけれど重要なリーダーの仕事』(ともにかんき出版)、『一流の仕事の「任せ方」全技術』(明日香出版社)、『導く力 自分をみつめ、自ら動く』(KADOKAWA)など
「私の母は乳がんを患い、25年以上にわたりがんの消失・再発を繰り返していました。抗がん剤治療を受けながら変わらず仕事に情熱を注ぎ続けていたのですが、当時、その姿を見て私は悲しい顔をしたり、『仕事なんてしないで』というような言い方をしたりしていました。しかし、大好きな仕事をがんだから休めと家族に言われることが母にはとてもつらかったらしいのです。考えてみれば、がんだからといって仕事ができないわけではありません。これは完全に私のがんに対するアンコンでした」