「無意識の思い込み」気づいた子に起きた劇的変化 「アンコンシャスバイアス授業」導入じわり増

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授業を実施した学校での評価も上々だ。先に紹介した美賀多台小学校6年1組の担任である前田崇博氏は、「今後D&Iが大切にされる社会の担い手である子どもたちに必要な概念だと感じて道徳の授業に取り入れましたが、私自身も非常によい学びの機会となりました」と語る。

アンコンの授業を受ける神戸市立美賀多台小学校の児童たち
(写真:神戸市立美賀多台小学校提供)

6年生には「人権や多様性を大切にした社会は理想だけれども、社会には矛盾がいろいろある。それでも、やはり理想を大切にしていきたいよね」という話を授業後にしたところ、とても真剣な表情で聞いてくれたという。

「ある子は、いつも自分を卑下していたことについて『自分の性格のせいだと思っていたけど、無意識の思い込みだとわかった』と授業後の感想に書きましたが、こうした変化は大きいことだと思います。子どもたちは周囲の影響を受けていて、無意識に『女性は〇〇だ』『自分には無理』と思い込んでいる子がいます。こうした子どもたちにとって、アンコンが生きやすくなるヒントになってほしいですし、子どもたちの柔軟な思考での学びが家庭に広がり、大人たちにも波及するといいですね」

保護者も教員も学ぶことで子どもの可能性をひらく

文科省は19年度から「次世代のライフプランニング教育推進事業」を実施している。その中で、子どもたちが固定的な性別役割分担意識にとらわれず主体的に進路選択できるようにするため、指導的立場にある教員自身のアンコンの気づきを促し、教育活動や学校運営などを男女共同参画の視点から捉え直す必要性を指摘している。こうした流れもあってか、守屋氏には教員向けの研修や講座の依頼もあり、随時対応しているという。

「ゆくゆくは、先生方が子どもたちにアンコンを教えられるようになってほしい。そのために、先生方を対象に教材やトレーニングを提供する『子どもたちへのアンコンシャスバイアス授業の実施支援講座』も始めたいです」と、守屋氏は言う。

守屋氏が研修を行うある企業では今年、社員の子どもたちに向けたアンコンのワークショップをオンラインで開催した。中には親子で参加する姿もあったそうだ。

「普段はD&I推進とかイノベーション、リーダーシップという文脈でアンコンを学ぶ大人が、子どもと一緒に学ぶことで『自分の発言がわが子の可能性を狭めている』と感じたそうです。アンコンは保護者にも、先生にも、子どもにも、誰にでもあります。だからこそ共通言語として話すことができます。垣根なく共にアンコンに気づくことでよりよい関係を築いて自身の可能性にチャレンジし、誰もが生き生きと過ごしていける社会になっていくことを願っています」

(文:田中弘美、注記のない写真は一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所提供)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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