エリザベス女王学んだ「世界最強の帝王学」とは? 「学校に通わずに」身に付けたことは、なにか

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世界の王室や、皇室など、特別な立場にある人について語るときに出てくる言葉がある。「帝王学」だ。帝王学とは、伝統のある家系・家柄などにおいて、特別な立場にある人が、その立場にふさわしい能力を養うために学ぶ全人格的な教育である。それゆえ特定の学問を指すわけではない。リーダーシップ論とも似ているが、その内容は、限定的なものではなく、さまざまな領域における知識や経験、振る舞い方など、幅広い。特別な立場の人にのみ必要とされてきた帝王学。その秘密に迫った。

「世界最強の帝王学」が生まれた瞬間

世界はボーダーレスになり、教育においてもそれは例外ではない。もはやどんな教育でも、本人が望めば受けられる時代だが、ベールに覆われている学問がある。それが「帝王学」だ。帝王学で学ぶ内容は、幅広い。そして、必要とする人はごく限定的な特定の立場に立つ人のみだった。しかし、実は帝王学は、一般の人にも有用な内容ではないかと興味をもたれている。いったいそれはなぜなのか。

まず、帝王学がカバーできる範囲が、王室や皇室、経営者、政治家、医者や茶道や華道などの家元など幅広い、ということが挙げられるだろう。求められる能力は異なるが、共通のビジョンや、共感力、統率力、判断力を養い、その立場を承継するためにも、帝王学は使えるのだという。

大きなビジョンを持って、社会問題の解決に動き始めるような社会起業家や経営者が増えたこともあるだろう。ビジョンに共感し、共に行動してもらう人を増やすのに、帝王学を学ぶことは有益だ。また、近年企業でも事業承継が経営課題として取り上げられるが、共通のビジョンや、共感力、統率力、判断力を養うためにも、帝王学は使えるという。

筆者は、国際教育評論家として、ある人物の帝王学に興味を持った。それが歴代最長の英国君主である「エリザベス女王2世(以下、エリザベス女王)」である。

エリザベス女王は、弱冠25歳にして英国の女王に即位した。予想外に若い年齢での即位であり、生まれた時から「女王になるべき」人生を歩んでいたわけではない。なぜなら、エリザベスの父ヨーク公(後のジョージ6世)には兄であるエドワード8世がおり、ヨーク公が国王に即位するのは、エドワード8世が高齢になり、退位してからと考えられていたためだ。しかし、エドワード8世は、王太子時代から交際のあった離婚歴のある米国人女性ウォリス・シンプソンとの結婚を望んだため、即位から1年も経たずに退位、父であるヨーク公がジョージ6世として、英国王に即位することとなった。そこからエリザベス女王は、次の王としての期待が寄せられるようになり、帝王学が開始されたのである。

ちなみに父であるジョージ6世は、吃音に悩まされ、その様子は2010年に製作された映画『英国王のスピーチ』でも紹介された。映画のキャッチコピーは、「英国史上、もっとも内気な王」。そのように揶揄されたジョージ6世。そんな内気な王が娘に授けた帝王学とは、どのようなものだったのだろう。

エリザベス女王が即位した際、首相であったのが歴史を変えた名宰相とも称されるウィンストン・チャーチルである。エリザベス女王は、チャーチルを含め15人の英国首相を任命し、歴史的には、スエズ危機をはじめEUの加盟、フォークランド紛争、ポンド危機、中華人民共和国への香港返還、ダイアナ元王太子妃の死、EU離脱、コロナ禍と政治、経済、戦争、外交など、さまざまな問題に英国領君主として対峙し、任務を全うしてきた。そして今なお現役で公務に就いている。

ウィンストン・チャーチルと、エリザベス女王の顔が印刷された切手

「学校に通ったことがない」エリザベス女王

世界には、英国の国王を君主とする英連邦王国が16カ国あり、エリザベス女王の代理としてカナダ、オーストラリアに総督が任命されている。

「君臨すれども統治せず」の原則が貫かれているが、カナダに流通する全硬貨にはエリザベス女王の図案が刻印され、20ドル紙幣にも表面にエリザベス女王の肖像が描かれている。また、オーストラリアの硬貨にもエリザベス女王の肖像が刻印されている。そこからもわかるように、エリザベス女王の影響力は統治せずとも大きい。エリザベス女王の帝王学が最強である、と言われるには理由がある。

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