小学校「教科担任制」モデル校語るメリットと苦労 第四葛西小、複数教員指導の効果を早くも実感
これまで教科担任制は、令和4年度予算の概算要求を見据えて推進されてきたが、「教員の加配は期待できないと考えるべき」と明海大学客員教授の釼持勉氏は話す。小学校の教員採用倍率が低迷し、少人数学級への移行で教員が必要になる中、新たに専科指導教員を確保することは困難が予想されるからだ。
さまざまな学校で教科担任制の取り組み方について指導を行う釼持氏は「時間割の作成や取り組みに慣れるまで時間を要する。にもかかわらず教科担任制の準備は相当遅れており、改善の兆しが見られない」と警鐘を鳴らす。とくに教育予算に余裕がある自治体や、専科教員が多く配置されている学校は「すでに取り組んでいる」という意識が強く、逆に腰が重いという。
実際、今回取材した第四葛西小学校のような学校内で完結して教科担任制に取り組むことができる大規模校でさえ、時間割の作成や先生たちが慣れるまでにある程度の時間を要している。先んじて教科担任制に取り組む学校からアドバイスをもらって実践した取り組みもあったが、自校にはなじまず、最適なやり方を模索した。
例えば、学級数が少ないなど自校だけで取り組みが難しい学校は、近隣の小学校や中学校との連携、また僻地にある学校は遠隔合同授業で対応することなども考えられるという。できるだけ早期に、学校規模や実情に合わせたベストな方法を教育委員会や校長が、リーダーシップを発揮しながら探っておく必要がありそうだ。
「専門性を持って高度な知識を吸収し、学びの質を高めることはどこの学校でも問われます。人材育成を加味しながら進めていくのが大事で『指導力のある人は高学年、ない人は低学年』では担任する学年が固定化されてしまう。教科担任制がうまくいかないと、学校経営は回りません。みんなで協働しながら全体の指導力の向上を図る教科担任制を進めてほしい」(釼持氏)
今、小学校は新学習指導要領のスタートをはじめ、GIGAスクール構想による「1人1台端末」の導入や新型コロナウイルス対応など、さまざまな課題に追われている。疲れが出ている学校があるのも事実だが、校長のリーダーシップの下、チームワークが発揮できている学校はうまく回っている学校が多い。学校間の格差が、子どもたちの学びの格差にならないよう教科担任制も早めの対応をしていきたいところだ。
(文・撮影:編集チーム 細川めぐみ)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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