小学校「教科担任制」モデル校語るメリットと苦労 第四葛西小、複数教員指導の効果を早くも実感

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1学期末には、教員へのアンケートも行っている。「運動会の練習や水泳指導の特別時間割による困難が生じた」「通級児童の時間割の調整や変更が難しくなった」「2時間続きで自クラスの授業を行える枠がなくて困った」「月曜1校時が、いつも朝会で短くなる」「週に一度の学年での統一した空き時間は学年会として活用することが少なかった」「低学年も隣のクラスと交換授業をやってみたいと思う」など、さまざまな意見が寄せられた。すべてに対応するのは難しいが、2学期の時間割はこれを基に再編成した。

「週の始まりは、担任が『落ち着いて1週間頑張ろう』という時間を確保したいという声が多く、月曜日の1時間目には専科を入れないようにしました。また週に1度、学年会ができる時間を設定したものの開けなかったという意見が多く、子どもたちが帰ってから開くほうがいいということになり、わざわざつくる必要がなくなりました」(鈴木氏)

教科担任制を導入する目的は、主に4つある。1. 児童の学力向上、2. 複数の教員が多面的に児童を見ることによるきめ細かな指導の実現、3. 小学校から教科担任制に慣れ中学校への移行をスムーズにする「中1ギャップ」の緩和、そして4. 教員の働き方改革だ。

教科担任制の4つの目的
1.  児童の学力向上
2.  複数の教員が関わることで多面的に児童を見ることができる
3. 「中1ギャップ」の緩和
4.  教員の働き方改革

中でも、教員が得意な科目を教える、また教える教科を絞れれば専門性や指導力が上がり児童の学力向上が期待できることは大きい。

担任が、すべての科目を教える学級担任制では、各教科の各単元の授業を行うのは1年に一度だけ。それが教科担任制になると、1年間で複数回同じ単元を教えることになる。一度の準備で3回、4回と授業ができるので、その質も高くなるというわけだ。準備に時間をかけられることはもちろん、課題が出ても「数年後、また3年生の担任になったとき」ではなく、すぐに改善して次の授業を行うことができるメリットもある。

実際、学力向上にどうつなげるか、またその推移をどう見ていくのかには課題がある。だが、第四葛西小学校では複数教員の指導による効果を早くも実感しているという。

「学年担任という意識が、日に日に高まってると感じています。例えば、各教員が授業中だけでなく、それぞれのクラスに出入りして指導するなど、見て見ぬふりをしなくなりました。自分の学級以外の子も『あの子はどうした?』といったように情報共有の質量ともに違ってきています。1学期は戸惑いもありましたが、2学期は先生同士で調整して授業を交換するなど確実に慣れてきています」(鈴木氏)

専科指導の対象は外国語、理科、算数、体育の4教科

文部科学省は、中央教育審議会の答申で「小学校高学年からの教科担任制を(令和4年度を目途に)本格的に導入する必要がある」とされたことを受け、昨秋から「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方」について有識者会議で議論を進めてきた。

そして21年7月には、外国語、理科、算数、体育の4教科を優先的に専科指導の対象とすべきという報告書を公表。今後は、教科担任制の趣旨・目的の実現に向け、地域や学校の実情に合わせた対応を各教育委員会に期待するとしている。

明海大学 客員教授 釼持勉(けんもち・つとむ)
千葉大学教育学部卒。兵庫教育大学大学院修士課程修了。福島県立西会津高等学校、東京都文京区立明化小学校、北区立滝野川小学校、杉並区立高井戸第四小学校、荒川区教育委員会指導主事、教育庁指導部指導主事、東京都立教育研究所指導主事、東京都教職員研修センター統括指導主事、国立市立国立第七小学校長、小金井市立小金井第一小学校長、帝京大学教育学部初等教育学科教授、帝京科学大学教育人間科学部教授を経て現職
(写真は釼持氏提供)
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