GIGAスクール「ICT化の波」乗れない先生の処方箋 よくあるトラブルや失敗をカンタン解決に導く

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松下氏の指摘は学校だけではなく、民間企業など多くの組織で共通することだ。時機を逃せば、質問できる窓口はどんどん狭くなって孤立無援になる。そうなると、今度は時代の大きなうねりに取り残された人たちが集まって、不満を吐き出し批判が始まる。決してそこに建設的なアイデアが生まれることはない。教員間のICTギャップを埋めるには、やはり今このタイミングしかないのだ。

今年8月、そんな松下氏が中心となって出版した『学校ICTサポートブック』は、これからICTを活用した授業に取り組もうとしていたり、機器の扱いにちょっと失敗して挫折しかけているけれど、もう一度やってみようという気持ちになりかけている先生たちの背中をそっと押すためにまとめられたものだという。

ICTやパソコンなどに詳しい先生方には物足りないかもしれないが、ICT化の波に乗るラストチャンスに遅れないよう「これでもか!」というほど徹底的に専門用語をそぎ落とした本で、誰でも気軽に手に取り読み進められる。

先生こそ失敗すべき、小さなきっかけの積み重ねで前へ進もう

書籍出版のきっかけは、2020年10月ごろに始めた松下氏と同僚の先生、教育アプリ企業の営業担当者による「大人の探究活動」だ。3人ともICT教育に強い関心を持っており、オンラインサロンの立ち上げをはじめ、さまざまなアイデアが浮かぶ中で「ICT関連の書籍を作ろう。やるからにはオンライン書店の売れ筋ランキング1位を獲得する」という目標にたどり着いた。

そこからSNSで参加者を募り、最終的に松下氏のチームには、執筆者11人(うち編著者3人)、4コマ漫画担当者1人の合計12人が集まった。学校の先生もいれば、EdTech企業勤めの人もいる。ICTの知識やスキルのレベルも、授業での取り組みや組織内でのポジションも皆バラバラだ。

「例えば、僕と同じ編著者の岩永崇史先生は、今年度からの1人1台端末導入を牽引してきた立役者ですが、そこに至るまでには並々ならぬ苦労があったと聞いています。教育のICT化実現のために、執筆者全員がずっといろんな葛藤を抱えてきたので、今、全国の先生方が置かれている状況はよく理解できます。

だからこそ、GIGAスクール構想の本格始動で悩んだり、困ったりしながらも一生懸命頑張っている先生方と同じ目線に立ち、クスッと笑ったり、うんうん、あるあるとうなずけたりするエピソードに落とし込んで、解決策や対処法を記そうと思ったのです」

とはいえコロナ禍だ。執筆者も全国各地に散らばっている。そのため編集会議はすべてオンライン、原稿のやり取りや校正作業もクラウドでファイルを共有して行ったという。原稿の原文がなくなるくらいまで赤字を入れて、わかりやすくかみ砕いた内容を目指した。そのかいあってか、メジャーなオンライン書店の「学校教育一般関連書籍」カテゴリーにおいて一時期、売れ筋ランキング1位を獲得、当初の目標を達成した。

「うれしかったのは、現役ICT支援員の方が『かわいい4コマ漫画でわかりやすく問題点を説明していて、読み進めると、まさに毎日の支援中に突き当たる端末や機器の不具合やエラーへの対処法、考え方などが詳しく記されており、大変参考になった』というレビューをしてくださったことです。僕らが意図したことが先生たちだけでなく、先生たちを支援する人たちにも伝わっている、共感して読んでもらえているとわかって、報われた気持ちになりました」

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4コマ漫画入りで解説されていてとっつきやすい
これからICTを活用した授業に取り組もうとしていたり、機器の扱いにちょっと失敗して挫折しかけているけれど、もう一度やってみようという気持ちになりかけている先生たちの背中をそっと押すためにまとめられた『学校ICTサポートブック』(学事出版)
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