いじめに気づく大人、気づかない大人の決定的差 いじめの定義変更が、認知件数の増加に影響
「おはよう、行ってらっしゃい、おかえり、今日学校どうだった、という定型文化したあいさつを毎日繰り返す、つまりルーティン化しておくことがポイントです。『今日、学校どうだった』と聞けば大抵の子どもは毎回『別に』とか『普通』と返すでしょう。それを365日繰り返していると、ある時、いつもとニュアンスやトーンの違う『別に』が返ってきたときに気がつくようになるはずです」
共働きで、子どもと共有する時間が少ない保護者も多い。それでも「おはよう」や「ご飯だよ」など、毎日続けられる最低限のコミュニケーションはあるはず。面と向かって言うことができないときはそれこそスマホでもいいだろう。
もう1つ、いじめの新しいタイプを知っておくことも大事なポイントだ。
「最近注目されているのは、ステータスメッセージ(ステメ)いじめです。LINEで自分の気持ちなどを一言で伝える小さなスペースがあるのですが、そこで例えば『私は教科書を忘れたことなんてないな』と書く。普通に考えればいじめでも何でもない言葉です。でも、その日、教科書を忘れた子が同じクラスにいたら、その子は自分のことだとわかるし、ほかの子も『あぁ、あの子のことだ』とわかるでしょう」
そういう新しいタイプのいじめがあることを知らなければ、まず気づくことはできないし、対処のしようもないのである。知ったうえで、子どもたちにツールの使い方や気をつけるべきことなどを伝えることも必要だ。
子どもの相談にどう対応するべきか
「何かあったら相談しなさい」。大抵の大人は子どもにそう言う。そして実際に(レアケースではあるが)子どもが相談すると、「もっと強くなればいい」とか「あなたにも何か問題があるんじゃないの」とその場しのぎのような対応をする。それでは「やっぱり相談しても意味がない」と諦め、二度と相談には来なくなる。もちろん「今、忙しいんだ」と突き放すのは論外だ。
「きちんと話を聞くこと。しかし、問い詰めるようなことをしては逆効果です。子どもが話したいところまで聞き、それ以上先を聞き出すようなことをしてはいけません。そして話を聞いたうえで、暴力や無視があるのならまずそれを止めること。そのためには学校も含めて情報を共有することが大事ですし、場合によっては出席停止にするなどの対応も必要でしょう。いじめの『行為』がストップされるための対策は急ぐべきです」
一方で、いじめた側に反省させることを急いではいけないという。そこを急ぐと反省したポーズを取るだけになりがちだからだ。いじめられた側も、その子が本当に反省していないことを感じ取るため結局、相互の不信感は解消されない。そうすると別のいじめ行為にエスカレートしたり、ますます水面下に潜ったりすることもある。では、どうすればいいのか。
「どうしていじめたのか、そのプロセスをいじめた子自身に振り返らせ、その子が何か問題やストレスを抱えていたのであれば、それをいじめ以外の方法で解決できなかったのか考えさせる。そうすればその子も問題を解決できる力を身に付けることができるかもしれませんし、本当の反省につながり、いじめた子との人間関係も修復できるでしょう。それには時間がかかることを覚悟すべきです」
自分の子どもがいじめられていることに気がついて、いきなり学校に怒鳴り込む親が時としている。しかし、いじめを解決するには保護者と学校がタッグを組むことが必要。突然怒鳴り込んだりしたらモンスターペアレントと見なされ、学校との関係が悪くなってしまうだけ。学校がきちんと対応しなかったり、いじめを隠蔽していたりしたらそれはいじめ防止対策推進法に反した行為なので、教育委員会や弁護士会など学校以外の機関に相談したほうがいい。