いじめに気づく大人、気づかない大人の決定的差 いじめの定義変更が、認知件数の増加に影響

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山﨑氏はそう言って、法教育の必要性を説く。

なぜ、大人たちはいじめに気がつかないのか

それにしても大人がいじめに気がつきにくいのはなぜだろうか。

何より、いじめられている子どもが、教師や保護者に打ち明けないということがまずある。意地、プライド、あるいは言ったらさらにいじめがエスカレートするのではという恐怖、大人に言ってもどうせ理解してもらえないという諦観、等々のさまざまな思いがない交ぜになって、子どもは打ち明けない、打ち明けられないことが多い。

それに加えて山﨑氏はいじめの形態の変化を指摘する。

「今は、殴るとか蹴るといった直接的な暴力を与えるいじめから、間接的ないじめにシフトしてきています。例えばスマホを使い、誰か特定の子どもだけを仲間外れにするとか。だから保護者や教師は気がつきにくいのでしょう。ただ、コミュニケーションを阻害するタイプのいじめが、直接的な暴力によるいじめより軽いかというと、必ずしもそうではありません。むしろそうした精神的ないじめのほうが、子どもに与えるダメージは大きいという研究もあります」

スマホやSNSがいじめを引き起こしているわけではなく、「昔からあったいじめの形態が、そのフィールドをスマホやSNSに移しているだけ」と山﨑氏は話す

20年11月に東京・町田市の小学6年生の児童がいじめを訴えて自殺した問題でも、学校に配備された端末のチャット機能を使って一部のいじめが行われていたという。そうした事例を知ると、大人は「だから端末やスマホなどを持たせるべきではないのだ」と、ツールを問題視しがちだ。しかしツールはあくまでもツールにすぎず、本質的な原因ではない。

「スマホやSNSがいじめを引き起こしているわけではありません。昔からあったいじめの形態が、そのフィールドをスマホやSNSに移しているだけです。にもかかわらずスマホを取り上げたりすると、いじめられた側も含めた子どもの恨みを買うだけで、いいことは何もありません。いじめる側は別のツールを使うようになるでしょう。スマホやSNSでどのようないじめが行われているか、まずそれを知ることが大事です」

いじめに気づきやすくする方法

子どもが言わないのなら、もっと注意深く観察すればいいという考え方もある。しかし注意深く観察されたりしたら、子どもはより注意深く隠そうとする。あるいはもっと陰湿ないじめになるかもしれない。大人にとって観察し続けるのは決して楽ではないし、どこかに必ず隙が生まれる。子どもはそこを見逃さない。ではどうすればいいのか。

「いじめに気がつかないわけがないと豪語する先生たちに聞くと、『教室に入ったときの雰囲気でわかる』という答えが多いので、想像を絶するくらいの敏感さに驚いたことがあります。でもそれは毎日教室に入り、雰囲気を感じているからできることなのです。学校というのは、朝礼から始まって授業に至るまでルーティン化されている面があります。毎日同じことを同じ手順で繰り返す。だからこそ先生はちょっとした変化に気づくことができるのです」

(撮影:尾形文繁)

ならば、保護者はどうすればいいのか。

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