正解ない探究学習「教員も学ぶ側から始めよ」の訳 まずは自分事として経験、体感することが大事

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

教育者自身が「探究」を学ぶ

実際、人工知能研究者による「人工知能研究者から直接学ぶ〜AIって何ができるの? これからの社会はどうなる?」、店舗を持たずに厳選された素材で作られたパンを売るインターネットショップのマーケティング担当者に教えてもらう「食パン1斤が1500円以上って、ありえるの?」、救急専門医を講師に招き、「病院救急—最前線救急の実際を探究しよう」などの教育プログラムを実施した。

社会に価値を生み出し仕事を楽しむ“よき大人”と触れ合いながら、少人数で1つのテーマにじっくり向き合うこのプログラムでは、参加した子どもたち一人ひとりの世界を広げ、自分で考えること、周りの人の考えを受け入れること、みんなで話し合って納得できる答えを作っていくことの大切さを伝えてきた。

「こうした数々の子どもたち向けのプログラムを通じて、手応えを感じてきました。そこで、教育現場で日々子どもたちと向き合う教員や教育に携わる方々が自らプロジェクトを立ち上げ、実施してみる中で『探究する学び』を体感できるプログラムを実施することが、教育のアップデートにダイレクトにつながるのではないか、と考え始めました。また、私は以前、医療機関の後方支援の仕事をしていたのですが、医療の世界では、医師、看護師、薬剤師などが、よりよい医療の提供を目的に“チーム”として動きます。教師も同じことができないだろうか、とも思ったのです」

こうして、教員や教育関係者が自ら探究し、「探究する学び」を教育現場で実践できるようになるための教育者養成プログラム「Learning Creator’s Lab」(以下、LCL)が、16年にスタートした。

LCLは、約8カ月間のプログラム。前半は、軽井沢風越学園校長・園長の岩瀬直樹氏、一般社団法人「みつかる+わかる」代表理事の市川力氏、東京インターナショナルスクール理事長の坪谷郁子氏など国内の第一線で活躍する探究学習の実践者から、探究学習のルーツや理論、フレームワークなどを学ぶ。後半は、5人ほどのチームに分かれ、思い思いの探究プロジェクトを立ち上げ、お互いのチームの現状報告、アドバイスをし合いながらブラッシュアップしていく。

LCLのチームのプロジェクトで鳥取に行き、地域の子どもたちと歩きながらその土地のことを発見していくプロジェクトを実施。写真は地域おこし協力隊や、地元の塾経営者、学校の教員などの混成チーム
(写真:藤原氏提供)

「探究学習の捉え方は、人によってさまざまです。学んでいくうちに『これが正しい』『あれが正しい』などと対立してしまいがちですが、それはよくないし、意味がありません。知らない人とチームを組んでプロジェクトを進めていく大変さを味わいながら、 “教え手”ではなく“学び手”として、探究のプロセスを自分事として経験してもらうこと、学びを通して自分なりの“探究観”を身に付けてもらうことを大切にしています」

毎年35人ほどの教員・教育関係者が参加し21年で第5期を迎えたLCL。プログラムを終了した“卒業生”は、新しい参加者の探究プロジェクトをサポートしたり、卒業生のコミュニティーで交流を続けることができる。

「LCLは、もともと活動的な先生も多いこともありますが、プログラム終了後、新しく学びの場を立ち上げたり、地域の活動を始めたり、メンバー同士でつながり、新たな取り組みをスタートするケースも多いです。例えば、LCL第3期で同じチームになった堺谷武志氏(NPOソダチバ・プロジェクト代表)、蓑手章吾氏(元公立小教員)、五木田洋平氏(元私立小教員)は、22年4月、東京都世田谷区にオルタナティブスクールを開校します」

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事