子どもに「スマホは悪」と考える大人の短絡的視点 賢い子ほどスマホを上手に使って遊んでいる

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教員は「知識を授ける人」ではなくなる

先述のように、日本のデジタル教育は世界から見ても大きな後れを取っている。2019年、デジタル教科書の制度化や学校教育情報化推進法が成立し、ようやくスタートラインに立ったばかりだが、日本のデジタル教育の未来は明るいと石戸氏は言う。

「これから検討すべき課題はまだありますが、日本ならデジタル教育先進国になれると私は考えています。というのも、全国津々浦々に一定レベルの教育が行き渡っている国は、世界的に見ても珍しい。一度物事が決まれば、全国に展開されるのも早いというわけです」

加えて、石戸氏は、日本の教員たちのポテンシャルの高さを挙げる。

「昨年8月に、プログラミング授業の開始に伴い、現時点で行われているプログラミング授業の報告を文部科学省が任意で求めたところ、400件を超えるレポートが集まりました。11月下旬になると学習指導要領に例示されている最も有名なプログラミング教育の単元が始まり、さらに全国で多数のプログラミング授業が実施されることでしょう。しかし、その前からすでに、独自に工夫して授業を始めている先生がこんなにいるのです。報告が任意であることを考慮すると、さらに多くの先生が取り組みをスタートさせていたはず。その先生方の情熱をもってすれば、今後日本が教育デジタル先進国になる可能性は十分にあります」

一方、教育のICT化によって、今後は学校のあり方や教員の役割も今後は変わっていくことになりそうだ。

「ICT化により、先生だけが教えるのではなく、プログラミング教育をはじめ専門知識が必要な授業はその分野のプロの方を招いたり、民間で行われている授業動画を見せたりというスタイルが可能になる。そうなれば、学校は開かれた場になり、知識を授けるのではなく、子どもたちが“学ぶ場”に変化することでしょう。

そうすると先生の役割がなくなると危惧する人もいるかもしれませんが、むしろ先生の役割の重要性は増すと思います。例えば動画を見て知識を得て終わりではなく、その後、子どもたちがディスカッションして学びを深める必要がありますよね。そのような場をコーディネートするといったように、先生はファシリテーターとしての役割を担い、知識を伝達する人ではなく、子どもたちと寄り添い、伴走する存在に変わっていく。

そのためには、先生がこれまで以上に一人ひとりの子どもたちに目を配ることや、先生自身も学び続けることが不可欠ですが、ICT化による業務効率化が、その時間を生み出してくれるはずです」

デジタル教育の推進には、今後も多くの課題があり、スマホとの付き合い方を含め、家庭でも教育現場でも手探りの状態が続くだろう。しかし、これからの時代を生きる子どもたちには、すさまじいスピードで変化する社会の中で、自分で考え、答えを導き出す力が求められる。教員も親も、スマホを子どもから遠ざけるのではなく、スマホを活用しながら子どもの力を伸ばすことが必要なのだ。

(文:音部美穂、注記のない写真はiStock)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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