「管理しない」校長の改革、ESDで学校はどう変わる まずは教職員が元気な学校づくりで持続可能に

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同校では、教職員一人ひとりが教育現場において自分のやりたいことを実現する「この指とまれ方式プロジェクト」も行っている。

「『ICTを活用し、英語の授業でアプリを導入したい』『職員室が働きやすい場になるようにしたい』など、企画した教職員がプロジェクトリーダーとなり、仲間を募って実践します。プロジェクトが実現しやすい環境を整えるのも、校長の役割。プロジェクトの進め方や会議のあり方を見直すなど試行錯誤を重ねながら、教職員が主体的に取り組むことができる土壌をつくっていきます。このような取り組みにより、教職員が年齢やキャリアに関係なくつながることができ、組織の活性化を図ることができます」

現場の声に耳を傾け、対話を重ね続ける

「よく知る教育関係者から、『住田先生の学校運営手法は、サーバントリーダーシップですね』と言われたことがあります」という住田氏。

サーバントリーダーシップとは、「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考えのもとに生まれた支援型リーダーシップを表す。トップダウン型のリーダーシップとはまったく異なり、双方のコミュニケーションにより組織が活性化する運営手法として注目を集めている。

「校長は、何でもできるスーパーマンのような存在である必要はありません。サーバントリーダーシップの神髄は、自己開示し自分がどんな人なのかをわかってもらったうえで、現場の声に耳を傾けフィードバックや対話を地道に重ね続けること。何か特別なことをするわけではありません」

住田氏が言う「対話」のひとつが、管理職になってから15年続けているという、教職員から毎週提出される「週案」へのコメントだ。

「週案のコメント欄に授業の悩みや自分自身の悩みなどを書いてきた教職員に対し、その都度私の考えを記し、折をみて話をしたり、必要に応じて参考になるような資料を提示したりしてきました。子どもの成長の様子やそれに対する自分の気持ちを書いてくれたり、挑戦していること、挑戦してみたいこと等も書いてくれたりする教職員もいます。それを機に新たな取り組みが始まったり、人間関係が深まったりすることもあります。コメントを書かない教員に対しても私から一言記すことで、対話が生まれることもあります。教職員は日々忙しく、毎日会話する機会がないからこそ、週案を通して全教職員の教育活動だけでなく、思いや悩みを把握し、フィードバックしてきました。私と教職員の大切なコミュニケーションツールだと思っています」

教職員との面談では、「傾聴し、問いを返す」ことを大切にしているという。例えば、教職員が「○○××がしたいです」と言ってきたら、「何のためにやるのですか?」「誰とやりたいのですか?」「やってどうしたいのですか?」などと丁寧に聞くことで、教職員自身が実現のためにすべきことを考えられるようになる。それが、任せられる人材への成長につながるという。

「信じて任せるマネジメントの最終段階は、『感謝』です。教職員同士が信頼し合い、お互いに『ありがとう』『助かりました』『(手伝ってくれて)うれしかったです』などと感謝し合える関係ができれば、そんな教職員たちの姿を目にする子どもたちも安心し、伸び伸びと過ごすことができます。教職員と子どもそれぞれの間に安心感が育まれて初めて、子ども一人ひとりが大切にされる学校ができるのではないでしょうか」

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