中学3年間で「英語話せる子」育てたい先生の本気 都立両国からドルトンへ「コミュ中心」授業の今

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英語が自由に使えるようになれば、受験の英語にも対応できる

そうは言っても保護者にとっては、大学受験に通用しなければどんなにすばらしい授業でも意味がないと考える向きがあるかもしれない。しかし、英語が自由に使えるようになれば、受験の英語にも対応できるという考えが布村先生にはある。

「なぜ、文法をやらないのか。そういった声が、両国高校でも保護者から多く寄せられました。英語が使えるようになってから文法という仕組みを知ればいいと伝えても『でも……』の応酬です。けれど、生徒が答えを出してくれた。中高一貫の2期生が、これまででいちばんの進学実績を出してくれた後、そうした意見は徐々に収まっていきました」

卒業生が授業の価値を語ることで、あるいは進学実績で示してくれることで、保護者が変わり、さらに周りの先生たちも変わっていったという。校内ではアクティブラーニングの勉強会が開かれるようになり、授業も少しずつ変わっていった。大学受験では、「この問題集をやらなければ合格できない」などの考えが根強く、なかなか授業を変えられない先生もいる。学校全体が大学の合格実績に縛られていて、コミュニケーションを中心とした英語授業のよさがわかっていても、一歩を踏み出すことが難しいのだ。

ただ、あくまでドルトン東京学園は日本の大学受験を第1目標に置かないことを堅持している学校だ。むしろ自由と協働で学びを深め、従来の型にはめない子どもを育成することを目指している。日本では大学受験を視野にカリキュラムを組む学校が目立つ中、ある意味、実験的な試みといえる。そんな学校で今後、布村先生はどんな教育を実践してみたいと考えているのだろうか。

多様な個性、興味を持つ生徒がそろうドルトン東京学園。従来の型にはめない子どもを育成することを目指している

「現在、グローバル人材の育成が叫ばれていますが、今はあらゆる社会的課題に対して、さまざまな国の方々と話し合って解決しなければならない時代となっています。例えば、原爆についても、日本の高校生は『戦争も原爆もよくないものだ』という認識がありますが、アメリカの高校生は『原爆を落としたから、戦争を終わらせることができた』と異なる認識を持っています。同じ高校生でも世界では原爆や戦争に対する見方が違うのです。そのとき、自分の思っていることを一方的に主張するのではなく、相手の立場も考えたうえで、同じ問題を解決しなければ本当の問題解決にならないのではないか。コロナ禍の問題もまさに一国では解決できない問題です。こうした世界の中で、本当のグローバル人材を育成するには違う視点を持ったいろんな他者と交流し、考えを深めていく必要がある。こうした交流や議論の場をこの学校でつくってみたい。今はそんなことがしてみたいと思っています」

100年を超える伝統の進学校、都立両国高校で異端ともいうべき英語の授業を実践してきた布村先生。今後も新しい学びに挑戦する意欲にあふれていたが、多様な個性、興味を持つドルトンらしい生徒たちを伸ばす授業のあり方も模索していた。1期生、2期生……と、どんな卒業生が出ていくのか楽しみだ。

(撮影:ヒダキトモコ)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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