「こども庁」一歩前進、幼い子への支援ほど効果大 子育て支援拡充で、株式投資より高い経済効果
「例えば、子どもの虐待に対する対応については、行政の縦割りの弊害があって、うまく連携を取れていないことが明らかになっています。そうした部分では一元化のメリットは、やはり大きいでしょう。他方、よく話題となる幼保一元化については、必要不可欠とまではいえないかもしれません。しかし、3歳以降の幼児教育について幼稚園と保育園はかなり重複しているので、制度自体をすり合わせて効率化と均質化に取り組むべきでしょう」
では実際、これから子育て支援が拡充されていくとして、どのような経済効果が生まれるのだろうか。その好例となるのが、米国の子育て支援「ペリー幼児教育プロジェクト」だ。こちらを分析したジェームズ・J・ヘックマン米シカゴ大教授らの研究によると、貧困家庭の子どもたちに幼児教育を受けさせた結果、高卒率が上昇し、40歳時点での就業率と所得が高まったという。その一方、重犯罪による逮捕や生活保護利用は減少。税収増と社会保障支出などの削減につながったという効果が生まれている。山口氏が言う。
「こうした効果を経済的価値に換算すると、年7~8%の実質リターンがあると考えられます。ちなみに株式市場に投資した場合の実質リターンが5%ほどですから、かなり高い経済効果があるといえます。つまり、社会的な投資プロジェクトと見なしても、かなり大きなメリットがあるのです。子育て支援から得られるリターンは政府の政策の中でも最大級のものです。そこで大事なことは次世代に対する投資と考えること。そして、すぐには効果が出ないが、そのリターンは将来、必ず大きなものになる。子育て支援を継続していくには、そうした長期的な視点が必要となるのです」
(注記のない写真はiStock)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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