ヤングケアラー追い込む「手伝いは美しい」の呪縛 背景には「ケアを考慮しない働き方」も

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一方で、子どもがいつでも相談できる体制も重要です。役所には公的支援の情報がありますが、子どもが自ら役所に行くことはほとんどありません。子どもにとって身近な学校という場に、地域包括支援センターのスタッフやスクール・ソーシャル・ワーカーなどの専門家が入り、情報を伝え、相談を受け、必要な支援につなげる仕組みが必要です。

今後は学校の中でヤングケアラーに関して責任を持つ先生を決めて、子どもや保護者に情報発信していく取り組みも進むはずですが、学校は子どもに「大変だったら助けを求めて」というメッセージを伝えてほしいと思います。

――ヤングケアラーの課題解決に向け、どのような視点が必要ですか。

ケアを公的支援ですべて肩代わりすることは不可能だと思います。それでも、子どもが自分の時間と家族のケアの時間との間で、よりよいバランスを見つけられるようサポートし、子どもが自身の可能性を十分に発揮できるようにすることが大切です。

澁谷智子(しぶや・ともこ)
成蹊大学文学部現代社会学科教授。東京大学教養学部卒業後、ロンドン大学ゴールドスミス校大学院社会学部Communication,Culture and Society学科修士課程、東京大学大学院総合文化研究科修士課程・博士課程で学ぶ。学術博士。日本学術振興会特別研究員、埼玉県立大学や立教大学の非常勤講師などを経て、2020年4月より現職

実は元ヤングケアラーの若者たちは、ケアを頑張ってきたことが就職活動で評価されずに悩むことも多々あります。高校卒業や大学卒業が遅れることも多い彼らは、資格取得やサークル活動、留学経験などをアピールする学生と比べて低く見られてしまうのです。中には「生活をしていただけ」「君のやってきたことは無駄だったね」と言われてしまう子も。そのため彼らは自信を失い、将来への不安を抱えています。

この問題は、育児や介護など家族のケアを仕事に支障があるものとして扱ってきた日本の働き方と密接に関わっています。ヤングケアラーはケアと自分の生活を回してきた人たちですから、本来なら仕事ができる人材だと評価されるべき。彼らの経験や力を生かせるようになれば、きっと社会はよくなります。

だから長期的には企業や教育現場に、ケアを組み込んだ働き方や評価システムが浸透する必要があると思います。ヤングケアラー支援も、ちょっとした隙間時間や労力、寄付などで積み重ねていける、誰もが参加しやすい持続可能な仕組みが必要だと感じています。

(注記のない写真はiStock)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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