「デジタル庁」準備室担当が語る「1人1台」の盲点 元文科省課長の髙谷氏「学習者IDの準備を」

もう一方的な上意下達の時代ではないので、現場も文科省の仕様どおりにやる必要はなく、どんどん改革していってほしい。冷静に考えれば、自分の学校では別のやり方のほうが文科省の真意に沿ったものになるようなこともあるはずです。だから、そのあたりをしっかり理解して、むしろ現場が主導して実行してほしいし、そのような教職員たちの取り組みを管理職は止めずに評価してほしいです。
「デジタル社会形成」の動きに教育界も歩調を合わせよ
――これから教育の情報化や学校教育はどのような方向に進むのでしょうか。
まずは教科書や教材などで子どもたちの関心を引き寄せるようなデジタル化の動きが進んでほしいと思っています。また、デジタル庁発足後には、「ガバメントクラウド」など自治体のデジタル化を進める施策も本格化していきますが、こうした「デジタル社会形成」の動きに教育界もしっかり歩調を合わせてほしい。
端末導入が先行したがゆえにそういった点が見落とされがちですが、今後は各教育委員会も自治体のデジタル部門と連携を取りながら、全体の最適化を考えていく方向に進んでいってほしいと思います。
教科書会社や教育ベンダーなど、教育ICT業界も同様に頑張っていただきたい。従来の教育ICT業界は極めて限定的な市場でした。各社は自治体や学校単位で丁寧に対応していた。それはいいことだったのですが、技術的な汎用性が低くなってしまった結果、社会全体に比べて教育のデジタル化が大きく遅れた側面もあります。
そこは教育のIT化を進めなかった社会の責任でもあるのですが、業界も既存の形に固執していては、時代に即した教育ICT産業の発展は難しいのではないでしょうか。これからはITに強いさまざまな民間企業が参画して技術進展に対応し、教育分野を牽引していくことを期待しています。
これからの学校は、デジタル社会に生きる子どもたちが格差なくICTに触れられる場所にならないといけません。その先には、情報やネットワークの活用で、これまでの学校教育のよさを生かしつつ、すべての子どもたちに最適な学びを容易に実現できる新たな教育があると思います。
今や社会全体がデジタル化から恩恵を得る方向に向かう中で、教育界もうまくICTを道具として活用し、子どもたちにとっても、教職員にとっても学校がよりいっそう魅力的な場になっていってほしい。そう願っています。

国立研究開発法人理化学研究所経営企画部長 兼 内閣官房デジタル改革関連法案準備室。2018年7月~20年7月文部科学省初等中等教育局情報教育・外国語教育課長。20年8月より現職
(撮影:今井康一)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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