「デジタル庁」準備室担当が語る「1人1台」の盲点 元文科省課長の髙谷氏「学習者IDの準備を」

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最終的に「個別最適な学び」を実現するためには、「情報=データ」が不可欠であり、そこに向かって教育の情報化が進んでいるのだと捉えていただきたい。個別最適な学びの実現に向けた準備としてまず教育現場でできることは、個人にIDを付けること。そうすると、1人ひとりの子どもたちのデータをきれいに整理できます。端末ごとにIDを付けていては、ただの端末利用になってしまいます。

――今、教育の情報化に向かうスタンスにはかなり地域差があります。

そうですね。情報リテラシーの有無により差が出ています。しかし大都市だからといって進んでいるわけでもなく、東京23区内でも取り組みの状況については違いがあります。その一方で、地方でも県内全員に学習者IDを付けて教育データの利活用にすでに取り組んでいるところもあります。しっかりとリーダーシップを取っている自治体はうまくいっているように思います。

――端末活用で課題となりそうな点は?

情報の活用だけでなく、協働的な学びを実現するためにもネットワークにしっかりつなぐことが重要ですが、いざ端末活用が始まると回線が十分でないため通信量の増加によって混乱が多発するだろうという心配はあります。また、個人情報保護の観点から、子どもたちの自宅での端末利用を制限する自治体もあるでしょう。それは保護者の理解がないとできないことだというのはもっともです。

ただ、1人ひとりの情報を踏まえて最適な学びを子どもたちにフィードバックするという今後目指す姿に進むうえでは、学校が個人情報保護を言い訳にガチガチな端末利用でよしとして止まってしまうのは最悪。現在、個人情報保護法改正も審議されていて、社会全体で個人情報を保護しながら活用を進めましょうという流れになっています。これからは情報の重要度に応じ、その保護と活用のバランスをつねに念頭に置きながら、保護者の理解を得ていってほしいと思います。

「若手のICT活用を管理職が止めないでほしい」

――デジタル化で業務効率を上げようと企業も試行錯誤で取り組んでいますが、教育現場のICT活用による効率化についてはどうご覧になっていますか。

デジタル化によって教職員の業務は増えるばかりで「大変になるだけだ」といった声も上がってきますが、そもそも逆。初期の導入やトラブル対応はやむをえませんが、本来ICTは業務を効率化・効果的にし、教職員の負担を減らして楽にするための道具です。それを前提に、今回の教育の情報化と併せ、学校業務も抜本的に変えて「働き方改革」を進めていただきたいと思っています。

――現状、学校現場ではなかなか働き方改革が広がっていきません。

民間企業でも、デジタルネイティブ世代のやりたいことを上の世代が潰すようなケースはよくあります。教育現場でも20代、30代の若手教職員がICT化に取り組もうとしても、その重要性を理解できない50代の管理職が止めてしまう懸念があります。今こそデジタル化で仕事を変えていくよいタイミングなので、ぜひ止めないでほしいですね。

また、担当課長時代には、文科省がよかれと思ってやろうとする取り組みも、都道府県の教育委員会、市町村の教育委員会、学校管理職、最後に現場の教職員と何層にもわたって伝わる間に、それが個々の学校現場で本当に必要なものとズレが生じると感じることもありました。さらに、学校現場でも「文科省が言ったことだから」といって目的も考えずに一言一句実行してしまうところがあるため、教職員たちはやらされ感が募ってしまうというギャップも感じてきました。

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