まず多いのが、①のタイプ。例えば毎年3月ごろになると「来年度は6年生を受け持ちます!」と張り切ってつぶやく人がいますが、これは人事情報の漏洩。守秘義務違反に抵触する発信はアウトです。
そのほか児童生徒の写真を掲載してしまう教員や、「テストでこんな面白い解答がありました」「こんなすてきな作品を作りました」と、児童生徒のテストやノート、図工作品などを、承諾を得ずにさらしてしまう教員も。肖像権や著作権のことをよくわかっていないのでしょう。
教員であることを明かしながらこうした発信を行うのは、公務員に義務づけられている「信用失墜行為の禁止」に抵触するため処分の対象になりかねません。
②は、例えば「GIGAスクール構想でうちの自治体ではこんなことをやっています!」など事実ではないことを発言する教員。なぜすぐばれるウソをつぶやくのか謎ですが、注目されたいのか、自分や物事を大きく見せようと話を盛りすぎる教員がいます。
学校の常識を安易に否定するのが、③です。例えば「宿題なんて意味がない」といった発言。ある程度経験のある教員が語るならよいのですが、若手は「家庭学習の習慣化」のような代替案を提示するわけでもなく安易に逆張りに走りがちなので、説得力がなく突っ込まれやすいと感じます。
「身バレ」はするものだと心得よ
――匿名だから「何を発言してもよい場」と錯覚してしまうのでしょうか。
そうかもしれませんが、子どもたちのそばに立つ教員が言いたい放題という状況はどうなのかなと。昨年、カナダの首相が「言論の自由は保障されるべきである一方、不必要に他者を傷つけるべきではない」といったことを発言していました。日本も思想や言論の自由は憲法で保障されており、公務員もSNSを禁止されるべきではありませんが、人を不快にさせる発言や他人の権利を侵害する発信はいかがなものでしょうか。しっかりと考えたいものです。
匿名であっても公立教員の信用失墜行為は注目を浴びやすく、炎上するとあっさり特定されます。最近も「身バレ」してSNSでの発言を理由に処分を受け、ニュースになった教員がいました。
また、ネット上での炎上がなくても、身バレでトラブルになることもあります。僕はニコ生では「かりあげ店長」という名前で配信していて、教育情報も一切発信していなかったのですが、なぜかある時から何者かが学校に「田中の配信をやめさせろ」と電話をかけてくるようになりました。ただの料理番組なので管理職も理解してくれていましたが、あまりにしつこく、学校に迷惑をかけられないと思ってアカウントを消去することにしました。

(写真:田中氏提供)
――現在、田中先生はTwitterをはじめ実名でSNSを利用されています。教員は実名でのSNS発信にシフトしていくべきだと思いますか。
実は、Twitterに関しては始めた時が公務員だったこともあり発信には慎重になっていて、3年前まで匿名利用で教員としての発信もしていませんでした。でも、Twitterを利用する教員は20代~30代と若手が多く、経験のある教員が実名で実践を伝えていくことも大事ではないかと思うようになり、自分も経験を重ねたので実名を解禁しました。仲間も賛同してくれて、少しずつ実名で発信するベテラン教員が増えつつあります。ちなみに、実名のほうが炎上するリスクも低いと感じています。
一方、ネットリテラシーに自信がない若手教員はTwitterをやらないほうがいいかもしれません。何か問題になって処分され、未来を閉ざしてはもったいない。もしやるなら、若いうちは保護者や学校関係者に見つからないようにやってほしい。その際も、教員としての信用失墜行為に抵触しないよう注意し、身バレ覚悟で情報発信してほしいと思います。