ICT教育とは?知っておきたい基礎知識 メリット・デメリットと事例に学ぶ成功の秘訣

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エストニアのICT教育で重要な役割を担っているのがHITSA(Hariduse Infotehnoloogia Sihtasutus)というNPOです。学校で使用する教材の研究や開発を手がけるほか、教員の研修なども担っています。

PISA2018では、エストニアが読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの成績で世界トップクラスに躍り出たことで、ICT教育の効果を実証するものとして世界で注目を浴びています。

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シンガポール

シンガポールでは、97年に策定されたICT教育マスタープランのもと、ICT教育の環境整備が進められてきました。その中でモデル校を認定し、先進的なICT活用に取り組むとともに、ベストプラクティスの共有なども行われてきました。

02年には子どもの家族構成などの基本情報、出欠記録、成績などを一元的に管理する「学校コックピットシステム」が導入されました。またシンガポールのほとんどの学校には、子どもの学習状況を管理するLMS(Learning Management System)が導入されており、授業や家庭学習などで利用されています。

こうしたICT環境を利用して、シンガポールでは「在宅オンライン学習の日」を以前から設けてオンライン学習の訓練をしていたため、コロナ禍のロックダウン措置下にあっても学校教育に大きな混乱はありませんでした。

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米国

米国のICT教育事情は、州によって異なります。教育行政が、政府ではなく各州に委ねられているからです。

しかし、政府が教育政策に関与しないというわけではなく、教育格差の解消や優れた教育の普及拡大などは、政府を中心に行うこともあります。09年に大統領に就任したオバマ政権下では、ICT教育の環境整備によるICTインフラ格差の解消やSTEM教育の推進など教育改革が行われました。15年には、義務教育における必要科目としてコンピューターサイエンスが位置づけられました。

州によって状況に違いはありますが、「1人1台端末」やインターネットなどの通信環境整備をはじめ、BYODの活用やプログラミング教育の実施、教育データの活用など、ICT教育を進めていくうえで日本が学ぶべきところも多いでしょう。

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ICT教育を導入するためのポイント

ICT教育を導入するためのポイントは以下の3つです。

・事例に学ぶ
・ICT支援員など文科省の制度を活用、外部人材の活用
・ICT教育を導入することで実現可能な未来のビジョンを明確に持つ

 

事例に学ぶ

日本のICT教育は、海外に比べて後れを取っているといわれますが、教育にICTを導入して、すでに40年以上が経過する自治体もあります。

今ではICTを教育に活用した成功事例がかなり集まってきており、自身の学校でICT教育を取り入れることになった場合は事例を検証してから計画を進めたり、担当者から実際に話を聞くことも可能になっています。

さらに導入後は、自校のICT教育の導入過程・活用事例・結果を共有することで、日本全体のICT教育のレベルが上がることにつながります。

 

ICT支援員など文科省の制度を活用、外部人材の活用

ICT教育を導入するに当たり、専門家から支援を得ることも1つの選択肢です。

文科省では、ICTを活用した教育の推進計画やICT機器整備計画の策定等について助言を行うアドバイザーを派遣する「ICT活用教育アドバイザー派遣事業」を実施しています。同じく総務省でも、ICTやデータ活用を通じた地域課題の解決に精通した専門家を地方公共団体等に派遣する「地域情報化アドバイザー派遣制度」があります。

すでにいくつかのICT教育導入に取り組んできた外部のアドバイザーからの指導は有効かつ効果的だといえます。

 

ICT教育を導入することで実現可能な未来のビジョンを明確に持つ

ICT教育を導入するに当たり、どんな子どもたちを育てたいのか、どのような力をつけてもらいたいのか、そのためには何が必要なのかといったビジョンを明確にすることが大切です。

国の方針に従ってただ漫然と導入するだけでは、十分な効果を得ることが難しくなります。

しっかりとした目的を持ってICTを教育に導入し、児童・生徒の未来を応援できるような活用が望まれます。

 

まとめ

世界的に見ればまだ十分とはいえないものの、この記事で紹介したように日本国内でも確実にICT教育が浸透してきているというのが現在の状況です。

具体的な計画・方法論だけでなく、導入に当たって直面する課題、その解決手法など、包括的にICT教育について理解しておくことで、ICT教育によって得られる本来の効果を享受できるようになります。

コロナ禍で盛り上がったオンライン授業をはじめとするICT教育は、次代を担う子どもたちに必要な能力を養うだけでなく、これからの学校教育が目指す1人ひとりの児童・生徒に寄り添った個別最適な学びの実現の強固な基盤となっていくことでしょう。

(写真:iStock)

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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