ICT教育とは?知っておきたい基礎知識 メリット・デメリットと事例に学ぶ成功の秘訣

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こうした方針の浸透を図るため、文科省のWebサイトをはじめ、Twitter・YouTube・ニコニコ動画などでの情報発信、またICT教育の実践事例の共有なども行われています。

 

日本におけるICT教育

それでは実際の教育現場で、ICT教育はどのように計画・実行されているのでしょうか。海外との比較や国内の先進事例を交えて、実情を見ていきましょう。

<現状>

日本の教育におけるICTの活用度を知るには、OECD(経済協力開発機構)が15歳を対象に3年ごとに行っている国際的な学習到達度調査「PISA」が1つの参考になります。

18年に行われたPISAでは、日本は読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野についてOECD加盟国の中でトップレベルだったものの、学校の授業でデジタル機器を利用する時間が最下位でした。

人工知能やビッグデータといった技術がさらに高度化する「Society 5.0」の社会を迎えるに当たり、学校のICT環境の整備、活用は極めて重要な局面にきていますが、海外と比較して日本のICT教育にはまだまだ課題があると言わざるをえません。

文科省は19年、小学校の児童、中学校の生徒1人に1台端末と、全国の学校に高速大容量の通信ネットワークなどを整備する5カ年計画「GIGAスクール構想」を発表しました。ICT教育を進めるうえで欠かせない環境整備をいっそう進める計画であり、多様な子どもたちに最適化された学びを実現するものとして注目されています。

この「GIGAスクール構想」にある「1人1台端末」の整備が、新型コロナウイルスの感染拡大による休校の影響で、3年前倒して進められており21年3月にはほとんどの学校で完了する見込みとなっています。

<取り組み事例>

次に、日本においてICT教育で先進的な取り組みを行っている自治体として、茨城県つくば市の事例を紹介します。

40年前から義務教育にICTを導入しているつくば市では、小学校の児童、中学校の生徒1人に1台の端末をいち早く整備する「つくば市GIGAスクール構想」を推進しています。

学校と自宅での学習の「継ぎ目」をなくすことを目的にした「シームレス教育」を掲げ、児童・生徒は与えられた端末を自宅に持ち帰り学習ができるよう、環境が整備されています。

自分専用の端末を支給された児童・生徒は、学習進捗の確認や、プロジェクト型学習における情報の記録・保存・発表資料の作成などを個々に行うことができ、主体的な学びを促進するツールとしてICTを役立てています。

関連記事:
N高とつくば市、4月の決断を振り返る 休校下の新学期、現場は何を優先したのか
ネットの高校「N高」、つくばにS高つくる理由 オンラインとリアルの学びをうまく使い分け

 

<今後>

「GIGAスクール構想」の対象になっていない高校においても、独自の財源やBYOD(Bring Your Own Device/個人所有のデバイス利用)などにより「1人1台端末」を整備する自治体があるほか、文科省も高校生を持つ低所得世帯への端末購入費用を支援する方針を打ち出しています。

また今後は、ICT環境が整備され、いかに活用していくのかが課題となってきます。とくにICTは技術の進歩が速く、専門的な知識・ノウハウが必要なため、外部人材の活用によってICTの定着と活用をよりスピーディーかつ効果的に進めることもポイントとなるでしょう。

情報化の統括責任者であるCIO(Chief Information Officer)を置く民間企業が増えていますが、このCIOを学校や教育委員会に設置するとともに、教員の授業支援などを行う人材として「ICT支援員」の積極的な活用を文科省が推進しています。

教育においてもICT教育に関する外部人材の登用、協力を得ることは、今後の大きな流れの1つになるかもしれません。

関連記事:
DXのプロ採用「さいたまモデル」でGIGA加速 採用人数4人の枠に688人応募、その効果は?

 

ICT教育のメリットと期待できる効果

現時点では、国内でもまだ普及・発展の余地があるICT教育ですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。多くの要素を挙げることができますが、主に期待できる効果は以下の3つです。

・個別最適な学びを実現できる
・主体的・対話的で深い学びを促す
・いつでもどこでも必要な機器さえあれば授業が継続できる

 

個別最適な学びを実現できる

ICT教育を取り入れることの1つ目のメリットは、児童・生徒が自分に合った方法やペースで繰り返し学習ができることと、教員が児童・生徒1人ひとりの定着の度合いをより的確に把握し、最適な指導ができることです。

 

従来の繰り返し学習といえば、ドリルや問題集など、知識の定着には重要であるものの、画一的な教材しか選択肢がありませんでした。

児童・生徒が個々に取り組むドリルにデジタル教材を活用すると、教員は1人ひとりの達成度や正答率などを把握することができ、より充実した学習指導を行うことが可能となります。また、個々で異なる得意・不得意に合わせた問題に取り組むことができます。

 

主体的・対話的で深い学びを促す

ICT教育では、教科の学習内容や学習対象に対して関心を持ち、進んでそれらを調べようという興味を深めることが可能です。

例えば、何かの概念などについて学ぶとき、教科書にある挿絵を一斉に見ることでイメージの共有をするのではなく、写真や映像を教室のスクリーンや各自のパソコンで見ることで、イメージをより膨らませたり、理解を促したりすることができます。

より身近でリアリティーのある教材を使った学習は児童・生徒に驚きや感動を与え、それをきっかけに、自分の気になったことを重点的に調べていくことができるのもICT教育のよい点です。それぞれが主体的に興味のあることを掘り下げるとともに、見いだした情報を活用しながら他者と協働して学びを深めていくことができます。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事