ICT教育とは?知っておきたい基礎知識 メリット・デメリットと事例に学ぶ成功の秘訣

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また、チャットなどを活用することで教員と児童・生徒間で非同期型のコミュニケーションができるなど、新しい学習の進め方が実現できます。

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いつでもどこでも機材さえあれば授業が継続できる

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年3月に全国の小中学校に対し、日本の学校教育史上例のない一斉休校の要請が行われました。すべての授業が一時ストップし、児童・生徒や保護者に学習についての不安を生じさせたり、実際に学習の進行が遅れ、授業時間を確保するため夏休みの短縮や学校行事を中止したりする学校が相次ぐこととなりました。

こうした際にも、ICT教育を取り入れることで、自宅にいながら遠隔授業を受けることができるのはもちろん、学校での学びを自宅に持ち帰り復習するといった、通学と自宅学習による学習レベルの向上を図ることにも役立ちます。

また専門家による授業や、ほかの学校との合同授業、不登校児童・生徒の支援などを遠隔教育で行うことも可能です。

 

ICT教育のデメリットと課題

反対に、ICT教育を取り入れることのデメリットと課題は以下の3つです。

・機器導入と運用のための費用がかかる
・機器の故障や保守管理などにより教員に負担がかかる
・児童・生徒の健康に留意する必要がある

 

機器導入と運用のための費用がかかる

「GIGAスクール構想」以前も、国は学校のICT整備計画で目標を設定し、3クラスに1クラス分程度の端末配備を目標に市町村に対して地方財政措置を講じてきました。

しかし、用途が限定されない財政措置だったことで思うように整備が進まなかったために、「GIGAスクール構想」では用途を限定した補助金の交付によってICT環境の整備を進めることにしました。「1人1台端末」の導入には1人当たり最大4.5万円、校内LAN整備の費用のうち2分の1が補助されます。

しかし、「GIGAスクール構想」による整備完了後も、端末などの保守管理、更新の費用が発生するため、その負担をどこが担うのか議論が続いています。

 

機器の故障や保守管理などにより教員に負担がかかる

ICT機器には故障や保守管理がつきものです。

すべての教員がこれらの機器に強いわけではなく、また故障の原因がわからなかったりすれば対処にも時間がかかり、教員の労働時間を圧迫したり心理的な負担につながったりする可能性があります。

ICTの知見を持つ教員の育成や外部の専門人材、またICT機器を提供する企業などを活用しながら、そうした状況に対処できる体制を学校と教育委員会が連携して築いていくことが求められます。

 

児童・生徒の健康に留意する必要がある

「1人1台端末」が整備されると、授業中だけでなく休み時間や放課後などの授業外、自宅でもICT機器を使用することが想定されます。ドライアイや視力の低下、姿勢の悪化などに加え、電磁波による身体影響、ストレス、睡眠の質低下、認知機能の低下など、健康面への影響を懸念する声があります。

こうした懸念に対して、エビデンスを持って対応してく必要があるものの、児童・生徒の健康問題に留意してICTを活用していくことが大切です。

ICT教育が抱える「格差問題」

ICT教育は、日本国内においても都道府県あるいは市区町村によって取り組みの現状に差があり、次に挙げるような格差が実際に存在しています。

・ICT教育環境の格差
・機器利用の制限による格差
・教員のICT活用指導力の不足による格差

 

ICT教育環境の格差

ICT教育には環境の整備が不可欠になっているのに対し、自治体間の格差がますます広がっています。

文科省は、毎年「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」を公表しています。例えば、普通教室の無線LAN整備率は、19年度末時点では、全国平均が48.9%、1位が徳島県(75.9%)、最下位が新潟県(19.5%)です。また、大型提示装置の整備率は、1位が佐賀県(92.0%)、最下位が秋田県(17.5%)となっています。

現時点では住む都道府県によってICT機器の整備には大きな格差があるといえます。

 

機器利用の制限による格差

学校で貸与されたICT機器を自宅に持ち帰ってもよいというルールにするかどうかという議論があります。

機器は学校の所有物であり、あくまで学習のために貸与をしているため、自宅で自分がインターネットを楽しむために使う道具ではありませんし、盗難・紛失・ウイルス感染などのリスクも高まります。

そういった観点から自宅への持ち帰りを禁止している自治体も多くあります。

しかし逆に、持ち帰りができない場合、自宅にICT環境が整っている生徒と整っていない生徒で、ICTに触れる機会に大きな差が出てしまう、という点も指摘されています。

 

教員のICT活用指導力の不足による格差

ICT教育は子どもたちの学習への興味・関心を高め、わかりやすい授業を実現するうえで効果的であり、文科省はそれを支える教員のICT活用指導力の向上に取り組んでいますが、授業にICTを活用したり、児童・生徒のICT活用を指導する力などに自信がない教員が一定数存在するという調査結果もあります。

指導教員によって、児童・生徒のICT教育の浸透に格差が生じる可能性もあり、文科省では今後とも教員のICT活用指導力の向上を図るとしています。

 

ICT教育先進国の事例紹介

ここでは、ICT教育における“先進国”の事例についても紹介します。

エストニア

ICT教育先進国の事例の1つ目は、エストニアです。

ビデオ会議ツールの先駆けともいえるSkype(スカイプ)が生まれた国でもあり、多くのスタートアップ企業を輩出するエストニアは、国民ID制度を早くから導入するなど、行政サービスの電子化が進んだIT先進国として知られています。

そんなエストニアでは、ICT教育も進んでいます。2000年までに1人1台端末体制、01年までにすべての学校にインターネットを整備し、11年にはデジタル教科書を導入、12年にはプログラミング教育を開始しています。

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