DXのプロ採用「さいたまモデル」でGIGA加速 採用人数4人の枠に688人応募、その効果は?

現在、さいたま市教育委員会では計168校、約6000人の教職員を管轄している。生徒数も約10万3000人と規模が大きく、GIGAスクール構想をスムーズに推進するには、相応の対策が必要になるといえる。さいたま市教育委員会教育長の細田眞由美氏は、その対策について次のように語る。

長野県出身。埼玉県立高等学校教諭を経て2000年埼玉県教育委員会高校教育指導課指導主事、05年埼玉県立伊奈学園中学校教頭、08年埼玉県立庄和高等学校教頭、11年さいたま市教育委員会指導2課副参事、13年さいたま市立大宮北高等学校校長、17年より現職
「当初、GIGAスクール構想の導入期限は2023年度でした。それがコロナ禍によって、20年度末までと一気に早まってしまった。体制を早急に整えなければならない中で、われわれは、まず何をしなければならないのか――。スタッフらと議論する中で気づいたのは、私たちは教育のプロフェッショナルではあるが、ITのプロフェッショナルがいないということでした。
しかし、もう手をこまねいている状況ではない。そこで新たにデジタルトランスフォーメーション(DX)人材を採用することにしました。ただ、世の中でDXスペシャリストは引く手あまたで採用は難しいはず。そこで、副業兼業のスキームで募集することにしました」
早速、今年9月から人材サービス会社・ビズリーチの協力を得て採用活動をスタートさせたが、その結果は意外なものだった。採用人数4人の枠に、何と688人の応募があったのだ。最終的には、IT企業やコンサルティング会社に在籍の5人を採用。10月から本稼働することになった。民間から専門人材を募ってGIGAスクール構想を推進するケースは、全国的にも珍しいという。その効果は、実際どうなのだろうか。
エバンジェリストが、ユースケースを集中的に学ぶ研修
「もうびっくりです。『こんな発想があったのか』と斬新なアイデアをもらっており、今プロジェクトを進めているところです。インフラ整備に加えてセキュリティー対策、それにコンテンツの拡充など、やることは山ほどあります。それをいかに早く、われわれらしくオリジナリティーを出しながらやり遂げるのか。新たに5人の仲間に入ってもらい、今まさに私たちは“さいたまモデル”を構築しているところです」
その“さいたまモデル”とはどのようなものか。まず教職員のITリテラシーを向上させるために、各学校から4~5人のIT伝道師ともいうべき“エバンジェリスト”を選抜。そして彼らに「実際、ICTを現場でどう使うのか」というユースケースを集中的に学んでもらう。それを各学校に持ち帰って、ほかの教員に広めてもらう研修・指導を行っていく。つまり、各学校が自走していくためのスキームを構築するのである。同時に教育長が、168人の校長と車座になって意見交換する機会を頻繁に設けて、GIGAスクール構想の内容について理解や意思の統一を図っているという。