歴史学べるYouTube「現役ムンディ先生」人気の訳 「授業ノウハウが詰まった動画」社会人にも好評

動画配信すれば、高校を中退した生徒にもリーチできる
山﨑圭一氏が動画配信を始めたきっかけ。それは人事異動だったという。
「当時勤務していた高校では、2年生で古代と中世、3年生で近現代を教えることになっていました。担当していた2年生の生徒に、『3年生の近現代はもっと楽しいよ。受験まで一緒に頑張ろう!』と言っていたのですが、人事異動になってしまって。生徒から『先生の授業を続けて受けたい。授業の動画配信をしてほしい』と言われたのです」
こうして生徒の要望に応える形でチャンネルを開設したのが2014年のこと。それ以来、授業に校務、部活の指導も行う多忙な毎日の中で、終業後や休日に「力業で時間をつくり」授業動画を制作。教材と併せて、自身のホームページで公開している。
なぜ、そこまでやるのか。そこには、現役教員ならではの思いがあった。

早稲田大学教育学部卒業後、埼玉県の公立高校教諭、福岡県の公立高校教諭を経て福岡県公立高校講師。2014年、勤務先の高校で生徒に世界史を教えていた途中に他校への異動が決まったことをきっかけにYouTubeで世界史の授業動画の配信を始める。今や高校生はもちろん、小中学生、大学生、教員さらには社会人の学び直しなどにも活用され好評を博している。自身の著書、『一度読んだら絶対に忘れない』シリーズ(SBクリエイティブ)は累計60万部(世界史・日本史・経済編・人物事典)に及ぶなど執筆活動も行う
「私たち教員は一斉授業を行いますので、1クラス40人が80点を目指すような内容にせざるをえません。しかし、生徒の中には『社会が苦手で理解できない』という子もいれば、『もっと高度なことを学びたい』という子もいます。経験上、1クラスの80〜85%の生徒は学校になじみ、学校生活を楽しんでいます。一方で、10〜15%の生徒は学校になじめなかったり、勉強についていけなかったりして、中にはやむにやまれず退学してしまうような場合もあります。
そんなとき、授業動画があれば学校以外にも学びの場があり、高卒認定などの再チャレンジの場があることを示すことができます。留学中の学びや欠席時の補講など、これまで手が届かなかったところにもリーチできるのです」