子ども「科学好きにする」お姉さんの意外な正体 STEAM教育と科学的思考が、今必要とされる理由

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科学実験教室のワークショップを通じて、子どもたちに科学の面白さを伝えるサイエンスエンターテイナーとして活動する五十嵐美樹さん。主催していたサイエンスショーは、新型コロナウイルスの影響でオンラインに切り替わった。しかし、オンラインだからこその面白さや、展開の仕方があると語る五十嵐さん。これからの⼦どもたちになぜ「科学的思考」が必要なのか、子どもたちを科学好きにする方法を聞いた。

子どもが科学に興味を持つ接点をいかに多くつくるか

五十嵐美樹さんは、上智大学を卒業後大手電機メーカーに、エンジニアとして入社。仕事は楽しかったものの、やはりもともと好きだった科学を仕事にしたいと考え、会社が休みの週末を利用して、ショッピングセンターなどで子ども向けの科学実験ショーを始めた。

科学を身近に感じてもらえるような工夫をしている  

「サイエンスショーを始めたばかりの時のことは思い出したくもないくらいです(笑)。飛び込みでショッピングセンターに営業をし、その一角を借りて、ひたすら実験を子どもたちに披露するということを繰り返していました。

ただ実験を見せるだけでは、人が集まらないし足を止めてもらえない。科学を学ぶことを目的とした子供たちが集まる場などでやるサイエンスショーであれば、それでも見てもらえたのかもしれません。しかし科学にそれほど関心がなく、買い物に来て偶然サイエンスショーに触れた子どもたちの興味を引き、楽しんでもらうためにはそれだけではいけないと気づきました。

どうしたらいいのか。過去の自分をイメージし、どういう見せ方をすれば子どもだった頃の自分が興味を持つのか想像しながら、試行錯誤したことを覚えています」

ただ実験をするだけではなく、そこに自分の表現を加える必要があると気づいた。そこで思いついたのが、得意な「ダンス」と「科学」を掛け合わせた、まったく新しいサイエンスショーの演出だったという。YouTubeチャンネル「ミキラボ・キッズ」でも、「ダンス」と「科学」を掛け合わせた動画が人気だ。

その後、2015年には大手電機メーカーを退社し、サイエンスエンターテイナーとして本格的に活動を開始し、日本全国で科学実験教室を展開していった。

「中学生の頃、先生が授業でプリズムを使い、太陽光が色ごとに分かれる実験を見せてくださったんです。それだけを見てもピンとこなかったのですが、『これが虹の原理である』という先生の言葉を聞いた途端、『これが虹なんだ!』と急に視界が開けて、科学が自分の中に入ってきたんです。難しくて遠いことだと思っていたことが、身近に感じられた瞬間、むくむくと興味が湧いてきた。その経験から、サイエンスショーのコンテンツ内容を考える際には、子どもたちが科学に興味を持つ“接点”をいかに多くつくることができるか、にこだわっています」

失敗を避けるのではなく、許容する環境を整える

子どもたちは実験をしながら、驚くほどたくさんの仮説を立てる、と五十嵐さんは続ける。時には、大人が考えられないような疑問をぶつけてくる子どもたちに、あえてすぐには答えを教えないことも多いのだという。

科学の実験教室をきっかけに、子どもたちの科学への興味の扉が開く瞬間をたくさん見てきた

「すべての原理を私が教えてしまうのでは、仮説から検証するという貴重な機会が失われてしまいます。せっかく自分なりの仮説を持ったのだから、失敗してもいいので、とにかく実験してみるように促します。

安全な範囲内で、とりあえずやらせてあげて、失敗させてみる。子どもたちに必要なのは、失敗しないようにやらせないことではなく、失敗を許容する環境を整えてあげることだと思っています」

一度失敗させることで、自分の仮説と実験結果の隙間を埋めるための、次なる一手を子どもたちが自分の力で考える力が身に付くのだという。仮説を立て、実際にやって、失敗する。ひたすらそれを繰り返すことで、「科学的思考」が育まれる。これが五十嵐さんが実践する、「科学を通じた子どもとの対話」だ。

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