子ども「科学好きにする」お姉さんの意外な正体 STEAM教育と科学的思考が、今必要とされる理由

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オンラインだからこそ生まれる面白さ

新型コロナウイルスの影響でワークショップなどのイベントが中止になる中で、オンラインサイエンスショーという新たな取り組みをスタートさせたが、最初は戸惑いもあったのだという。

対面で展開するサイエンスショーでは、大きい動きに子どもたちは引きつけられる
オンラインのサイエンスショーでは、身近なテーマに加え、画面で綺麗に見えやすい実験が人気という

「すぐに、オンラインでウケるコンテンツと、オフラインで楽しめるコンテンツは違うということに気がつきました。例えば、オフラインである、対面のサイエンスショーでは巨大風船を割る実験が臨場感もあって、非常に子どもたちの感情を動かすことが多い。しかし、同じことをオンラインでやっても怖いのは私だけ。子どもたちは私の反応を見て、自分が楽しむか楽しまないか、判断するというふうになってしまいます」

試行錯誤を繰り返し、オンラインのサイエンスショーだからこそ表現できる面白さにも気がついた。「私一人が実演するのではなく、家にあるものをそれぞれ用意してもらって実験を行うので、準備できるものが各家庭で違う。つまり、実験の条件が微妙に違うということです。それによって生まれるいくつもの偶然が、同一の条件で実験をするときと違い、子どもたちの議論を生むことになる。これは一度に大勢がさまざまなスタイルで参加できるオンラインならではの面白さだと感じています」。

「将来、何になりたい?」と聞かれたら……?

今までにない職業をつくり出している五十嵐さんだが、子どもの頃、「将来何になりたい?」と聞かれるたびに違和感を感じた、と話す。

「そのように問われると、子どもは、今自分が楽しいと感じていること、好きなことを答えるのではなく、何らかの職業名で答えざるをえなくなるのではないかと考えています。それはすでにある職業名に、自分のやりたいことを無理やり当てはめることになり、自分自身をラベリングして、自分の可能性を狭めることになりかねないのでは、と思っています。

これからの子どもたちが大きくなる頃には、今は存在しない、新しい価値を持つ仕事をすることも多くなるでしょう。大事なことは、自分の得意なことや好きなことを組み合わせて新しい価値をつくり、それが求められる場所を探しにいくということだと思います」

五十嵐さん自身は、「将来何になりたい?」と聞かれるたびに、「うーん、エンジニアかな……?」と答えていたという。「そして気がついたら、いつの間にかエンジニアになっていました。本当は、科学も好きだし、科学と同じくらいダンスも好きだったんですが、その2つを組み合わせたような職業は、当時はなかった。でもこれからはどちらかを仕事にし、どちらかを諦めて趣味にするのではなく、好きなことをいくつでも掛け合わせて仕事にできる時代がくると思います」。

自分の得意な科学とダンスを掛け合わせて、サイエンスエンターテイナーという新たな職業を生み出した五十嵐さん。もちろん、最初から順風満帆だったわけではない。そこでも「科学的思考」を役立てた。自分で書いた企画書を持って、何度も飛び込みで営業に行き、フィードバックを集めて分析を重ね、改善をしていく。これは、まさに生きる科学実験だ。

「仮説を立ててやってみて、失敗したら何が悪かったのかと自分なりにフィードバックする。人生のすべてが、『科学的思考』の繰り返しだと思っています」

日本の子どもたちにSTEAM教育が必要な理由

OECD(経済協力開発機構)が15歳を対象に行っている国際的な学習到達度調査、PISA(ピサ Programme for International Student Assessment)の2018年度調査では、日本の科学的リテラシーと数学的リテラシーの点数は、諸外国と比較してもトップレベルだった。しかし、科学や数学を楽しいと感じる、何かの役に立つと考えている子どもの割合は少ない傾向にあるという。勉強はできるし、知識として知ってはいても、どうやってそれを実生活で使い、役立てていいのかがわからない。学校で習っていることが世の中とどうつながるのかという接点を見いだせない子どもが多いのではと、五十嵐さんは語る。

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