学校再休業でも「課題は紙媒体」が9割の実態 埼玉県1058校調査、ICTの活用で課題残る結果

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今後についても、県内のICT活用事例を収集、埼玉県立総合教育センターのWebサイト内にデータを蓄積し、各学校での活用を図っていくとしている。12月には小中学校教員を対象に「G-Suite for Education」等の活用についての研修を実施予定など、すでに具体的な改善策を講じている。また、ハードウェアやネットワーク環境については、GIGAスクール構想の推進により20年度内に進展する見込みだ。

授業時数が60時間以上不足する学校も

次に教育指導についてだが、小6・中3教育課程について調査したところ、どの学校でも通常どおりの授業が実施できなかったことで、授業時数が欠けており、それを補うための取り組みを行っている。この欠けた授業時数を確保するための方法として、長期休業日の短縮に加えて、学校行事やその準備に係る時間の見直しを挙げる学校が多い。

臨時休業で欠けた時数から学校再開後に補った時数の差を見ると、2割程度の学校では欠けた時数を補うことができていることがわかった。だが、欠けた時数が確保した時数を約2週間分(約60時間分)超える学校も2割程度見られた。それでも、全校が年度内に教育課程を終える予定と回答しており、今後どのような工夫で教育指導を行っていくのかが気になるところだ。

埼玉県教育局では、そもそも「授業時数の多寡のみで、学校の取組状況を評価することは妥当ではない」と考えている。臨時休業期間中に充実した家庭学習支援や、学習活動の重点化など、各学校が学習の定着に向けた工夫に取り組んでいることも考えられるためだ。一方で、授業時数が補充しきれていない学校には「児童生徒の学習の定着を十分確認したうえで、理解が不十分と見られる場合は、授業時数を積極的に確保するよう要請した」という。

段ボールに透明フィルムを貼り合わせたボード等を使った感染症対策を行い、対話的な学びを行う和光市立第二中学校(提供:埼玉県教育局)

一方、主体的・対話的で深い学びの視点での授業、とくに「対話的学び」の授業では、感染症対策として多くのが学校でマスク・フェイスシールド、アクリル板・透明なシート等物理的な対応をしたうえで授業を実施している。ICTを活用(オンライン)して意見を集約し、直接対話せずに対話的学びを行っているという学校は1割程度で、対話的な活動を極力行わないようにしているという学校も3割弱存在することが明らかになった。

おそらく各学校で、それぞれの事情があるだろう。だが、ICTの活用推進が求められ、また新学習指導要領で新たに盛り込まれた対話的な学びでは、児童生徒や先生がさまざまな対話や協働を通じて、思考を広げ深めていくことが期待されている。新しい生活様式と限られた学習環境の中で、子どもたちの学ぶ機会を止めることなく、少しでもその質を向上させる努力がまだまだ必要ではないか。

(注記のない写真はiStock)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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