広島県立高、保護者負担で「1人1台端末」の本気 民間出身校長が転身「広島県教育長」の凄腕

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

子どもが楽しくなる「問いかけ」をつくり出す研修とは

クラウドサービスを使って共同編集する様子(広島県立油木〈ゆき〉高等学校)。各自の意見を付箋に書き込んで集約し、関連する意見を分類している

県教育委員会では4月に「学校教育情報化推進課」も創設。16人の指導主事を置き、各県立学校のデジタル環境の状況を把握し、学校間の情報の共有化、教員への提案や指導を行っている。

「教育にICTを導入することについては、さまざまな議論がありますが、まずはやってみることが大事です。海外の事例を見れば、リアルの授業も変わらざるをえない状況にあると考えます。リアルの授業が面白くないのに、ICTを使った授業が面白いはずがありません」

そこで今進めているのが、子どもが楽しくなる「主体的・対話的で深い学びをつくり出すため」の教員研修だ。この研修では定評のある「ブルーム分類学」を活用している。これは単に知識を問うようなものではなく、子どもの思考を高度化する「本質的な問い(エッセンシャルクエスチョン)」を教員がつくり出し、スキルを求める発問までをつくれるようにする考え方だ。

例えば、社会の授業ではミシンが登場する以前と以後の生活を比較し、ミシンの登場によって何が可能になり、どのような新しい仕事が生まれたのか。それらの変化を年表と合わせて調べることによって産業革命の意味を知るといった具合だ。

「生徒たちが本当にアクティブラーニングできるような教科横断型、プロジェクト型の学習を実現させたい。そのためにICTとカリキュラム作りの研修を統合して行っています。せっかくオンライン教育をしているのに、ノートテイキングだけの授業では意味がありません。教育を変えれば生徒たちの目も変わります。実際、まずは商業高校で新たな授業スタイルを提案したことで、生徒たちの意欲も高まっています。将来、地元を担う彼らにこそ、新たな教育を届けたいのです」

今、リアルな授業をも変えうるような影響力を持つオンライン教育だが、県教育委員会では国が進めるGIGAスクール構想の後押しもあり、さらに強化を図っていく方針だという。

「学校の通信接続環境が、まだ十分ではありません。今後はWi-Fi環境をさらに充実させ、学校のどの教室でも通信が接続できるようにしたいと考えています。また家庭の事情でデジタル機器を所有できない生徒についても、給付金を創設してサポートを行っています。すべての生徒がデジタル機器を所有できるまで待つのが理想かもしれませんが、とにかくトライ・アンド・エラーの中で、少しでも前進するしかありません。そうして前進していけば、その総量は次第に多くなっていき、最終的にすべての生徒に行き渡らせることができるのです」

全国では二の足を踏む自治体もある中で、いち早くオンライン教育の体制を整えつつある広島県教育委員会。その先頭に立ってきた平川氏はこう語る。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事