「子どもの読解力」問題解決能力との意外な関係 先生がいなくても学び続けられる基盤とは

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とはいえ、「比較」については学習指導要領のさまざまな教科に書かれている。例えば、小学校1年生では、算数の「数と計算」や「測定」のほか、国語や生活でも「比較」について言及されている。国語と算数は小学校1年生から6年生まで、6年間にわたって「比較」に言及されているのだ。ほかにも小学校3年生の理科を見ても「物と重さ」をはじめとして、すべての内容で比較に言及。中学校でも似た傾向がみられ、小中学校で「比較」を学ぶ機会は少なくなかったはず。

「しかし、これまでの教育では先生や教科書が先に観点を与えてしまっていました。例えば『2本の鉛筆の長さを比較しよう』といった具合に。すると、子どもは長さ以外に、比較する観点を持ちにくくなります。ですが、いろいろな観点から比較できれば、情報を関連づけたり、整理したり、問題を見つけられるでしょう」

自分の観点を持ち、情報収集し、判断し、新たな課題を見つける。こうした問題解決の能力に加えて重要なのが、「知識の理解の質」だという。

「例えば、垂直と直角の違いを説明する際、問われるのは知識を理解している質です。知識をより深く理解するにはただ考えるだけではなく、他人に説明するという活動が大切です。さらに、知識を点で増やすだけではなく、点と点を線で結んでネットワーク化し、リンク(活用手段)を増やすこと。これが欠かせません」

ドリルや講義動画といったコンテンツの学びは、知識を点で増やすことともいえる。一方、議論や発話、体験などは点や線を増やし、構造化していくコンピテンシーの学びだ。

「もちろんコンテンツの学びも重要ですが、点を結ぶ線が太くなり、構造化することができれば『知識の理解の質』が高まるのです。しかも、こうした学びは学校を卒業した後も続けなければなりません。そこでも、言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力といった資質・能力が必要なのです」

変化のスピードがますます速くなり、社会のあり方も短期間で大きく変わる。その傾向は今後さらに加速するだろう。未来を生き抜くために、子どもたちが身に付けるべき資質・能力とそのために何をすべきか。「読解力」の真の意味を、今こそ理解しておく必要があるといえるだろう。

高橋純
東京学芸大学 教育学部 准教授。博士(工学)。富山大学大学院理工学研究科後期課程修了後、富山大学准教授などを経て現職。独立行政法人教職員支援機構客員フェロー。中央教育審議会臨時委員(2019年〜)、文部科学省「教育の情報化に関する手引」(2019年)などを歴任。

(写真:iStock)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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