コロナ禍のICT活用率「小中で1割」の事実 第3波に備え、学校が今から取り組むべきこと

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文部科学省は今夏、公立の小中学校、高等学校などを対象に行った「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公立学校における学習指導等に関する状況について」の調査結果を発表した。この結果が浮き彫りにしたのは、4月1日以降の休校期間中、多くの学校がICTを十分に活用できなかったという現実だ。休校期間で少なからず生じたカリキュラムの遅れや、今後予想される第3波以降を踏まえ、学校・自治体・教員はこの秋冬からどのような対策を取るべきか。調査結果を振り返るとともに、今後の対策について情報教育学者である放送大学情報コース・情報学プログラム教授の中川一史氏に話を聞いた。

小中学校ICT化、低水準に現場の課題感が強まる

文科省が公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校の設置者に対して行った「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公立学校における学習指導等に関する状況について」では、多くの学校でICT活用が遅れていることが判明した。実際、全体の8割以上が「各学校や家庭・児童生徒の実態を踏まえた積極的なICTの活用」に対する課題感を持っており、さらに7割以上は「児童生徒による学習状況の違いに対応した学習の支援」への問題意識を持っていた。

それを裏付けるように、同時双方向型のオンライン指導は、小学校でわずか8%、中学校でも10%の実施、デジタル教材の活用も共に3割程度と進んでいない。高校では約5割でオンライン指導の実施とデジタル教材の使用が行われたことを考えても、小中学校のICT化は低水準だといえるだろう。家庭における学習の状況把握と支援の方法は電話やFAXでの対応が大半で、約7割が一斉電子メールによる連絡を活用しているものの、同時双方向型のオンラインシステムによる連絡となるとやはり1割程度に甘んじている状況だ。またコロナ禍においても臨時登校や家庭訪問といった対面措置が多く実施されていたこともわかる。

一方、中等教育学校いわゆる中高一貫校では、同時双方向型のオンライン指導が70%、デジタル教材の使用が75%となっている。家庭との連絡手段も一斉電子メールが90%、同時双方向型のオンラインシステムによる連絡の利用が80%と非常に高い数字だ。設置者数が少ないとはいえ、中高一貫校ではICT化に積極的に取り組んでいる姿勢がうかがえる。

今回生じた学習面での遅れについて、ほとんどの学校が夏休みなどの長期休業期間の短縮や学校行事の見直しでカバーする方針を示すとともに、「ICTを活用した学習のための環境整備や教師・児童生徒の情報活用能力の向上を図る」と意欲を見せている。

ICT化、進めるのに不可欠な「4つのカギ」の連動

コロナ禍の収束が読めない中、教育のICT化は急ピッチで取り組むべき課題だが、いったいどのように進めればよいのか。放送大学情報コース・情報学プログラム教授の中川一史氏は次のように語る。

「教育のICT化は、『環境』『制度』『活用』『スキル』の4つを連動させて進める必要があります。『環境』と『制度』については、1人に1台の端末整備を目指すGIGAスクール構想や、デジタル教科書の法制化・小学校プログラミング教育の必修化などで加速しているといえるでしょう。ですから、問題は残りの『活用』と『スキル』です」

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