デジタル教科書の意外な効果が教室を変える 授業中、教員のチョーク&トークも減少
「1人ひとりが端末に向かって考え、それぞれのアウトプットを持ち寄って考えを深めていく。実際に授業を見させていただくと、グループワークの際にも、隣の子と交換した端末を見入っている子や、活発に議論を仕掛けていく子、1人で思考を深めている子など、それぞれに課題に向き合う姿を見ることができました」と森下氏。
デジタル教科書を媒介として自分の考え方を発信し、他人の考え方から刺激を受ける。実際、デジタル教科書を使用した授業では、自分で考えてアウトプットする時間、グループや2人での対話の時間が増え、教員が全員の前で話す時間が極端に短くなるという。

教科書は教える道具から学ぶ道具へ
デジタル教科書にプラスアルファされている、動画やアニメーションといった教材機能を一体化して活用することで、学びの幅も広がっていく。中学校英語教科書の会話文。複数の登場人物の会話をテキストだけで読むより、その場面のシチュエーションがわかる映像を視聴したほうが会話の内容と意味への理解が深まるのではないだろうか。
しかし、指導者用のデジタル教科書の普及は進む一方で、児童生徒が使用する学習者用デジタル教科書が浸透しているとは言いがたい。
「学習者向けデジタル教科書の導入はこれから。今は先んじて導入している学校の事例を精査している状況です。消しゴムのケースなどは、私どもが想像もしていなかった反応でした」と森下氏。こうした効果や使用事例などの共有が普及のカギを握るといえるだろう。
紙の教科書がデジタル教科書に変わることで、教員の話を一方的に聞くという受け身の授業から、子どもたちがより能動的に学ぶ授業への転換が促される可能性は否定できないだろう。
「教科書について、ユネスコは学ぶメディアと表現しているのですが、まさに、教科書をデジタル化することで、教える道具ではなく、学ぶ道具になるのです」。これからGIGAスクール構想や教育データの利活用が進む中、家庭学習を含めたさまざまな場面でデジタル教科書が果たす役割は少なくないだろう。
「だからこそ、まずデジタル教科書に触ってみてください」と森下氏は言う。「そうすれば、学びの可能性を広げる道具だということがわかるはずです。子どもたち自身もいったん使い始めたら、先生よりも早く機能を使いこなしています。デジタル教科書を使えば、いろんなことができる。ぜひそのメリットに気づいて現場の授業で生かしてほしいと思っています」。
(撮影:今井康一)
制作:東洋経済education × ICTコンテンツチーム
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら