山形県立酒田光陵高校、G Suite for Education導入で「大成功」の理由 「教室の風景が100年同じなのはおかしい」

2012年開校時より酒田光陵高校で勤務。情報科 教諭、情報科 学科主任
(提供:酒田光陵高校)
ICT環境が整った効果は大きかった。情報科教諭の櫻井敬士先生は、導入後の変化を次のように明かす。
「家で実習ができるようになっただけではありません。Classroomで課題を出したら、多くの生徒は面白がって取り組むようになりました。また、授業の効率や質も高まりました。対面での授業中にG Suiteで質問を出すと、その場で回答を集計して把握できるんです。これによって『ここは理解が深まっていないからもう少し説明しよう』『みんな理解しているから飛ばして先に進もう』と、リアルタイムで授業内容を変えることができるようになりました。紙に答えを書いてもらい、それを集めて授業後に見ていた頃と比べると、より生徒の理解度に合わせた授業が可能になりました」
学校全体を巻き込んで、ICT教育を推進した
情報科ではスムーズに浸透していったICT教育だったが、課題も残った。酒田光陵高校では週に一定時間、ほかの科の授業を自由に選択できる総合選択制を採用している。普通科や工業科、商業科の生徒が情報科の授業を選択することもあるが、他科の生徒はG Suiteを使えず、別の方法でケアしなければならなかったのだ。これを解決するには、オンライン授業を全校に横展開することが理想だった。

「教師の中にはITが苦手な人もいますから、いきなり全部の授業でICTを導入しようとしても、頓挫することは目に見えていました。『使うかどうかは先生ごとの判断で構いませんから、生徒の登録だけは全員分させてください。部活動の連絡にも便利ですよ』と説得して、まずは生徒側の環境を整えることから始めました」(湯澤先生)
全生徒のアカウントを登録したのは2018年だ。情報科の授業を取る生徒や部活動をしている生徒は、すぐに利用し始めた。さらにほかの生徒にも慣れさせるため、いじめに関するアンケートなどの各種調査に、G Suiteで回答してもらうようにしたという。生徒のほとんどは、自分のスマートフォンからログインしている。
一方の教師側は、若手を中心に利用が広がったものの、やはり温度差はあった。状況が一変したのは、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年2月末だ。
「当校の校長は『教室の風景が100年間も変わらないのはおかしい』が口癖。コロナ禍で休校が決まったときには、『これを機に全校でオンライン授業を!』と方針を打ち出して、一気に動き始めました」(櫻井先生)
生徒側の準備は整っていたので、混乱は少なかった。これまで利用していなかった先生も休校期間に研修を受けて、Classroomで課題を出すようになった。