前代未聞「山手線運休」、品川駅工事の一部始終 「高輪ゲートウェイ」への線路、2000人が作業

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今回の工事の特徴は、山手線をストップさせたこと以外にもある。山手線内回り・外回りと京浜東北線の北行(大宮方面)という3線を同時に切り換えたことだ。

品川駅ホームで報道陣の取材に応じるJR東日本建設工事部の関啓充課長(撮影:大澤誠)

関課長によると、線路の切り換え工事は通常1線ずつ行う。高輪ゲートウェイ駅関連でも、2018年6月に京浜東北線の南行(大船方面)の線路切り換え工事を行ったが、このときは1線のみで、運休期間も工事日の午前中のみで済んでいる。

ただ、今回は特殊事情があった。「京浜東北線と山手線は(田町―品川間で)立体交差しており、その関係上どうしても1線ずつの工事ができなかった」(関課長)。京浜東北線北行と山手線は、品川駅と田町駅の間で線路がクロスし、位置関係が入れ替わる。このため、3線同時でないと移設できなかったという。

山手線の運休が16日夕方までだったのに対し、京浜東北線が終日運休したのもこの点が関係している。高輪ゲートウェイ駅より田町駅寄りの工事箇所では、同線の新しい線路が従来の山手線内回り・外回りの線路跡を横切る形となる。「山手線を移設してからでないと、京浜東北線の線路を動かせない。そのため、どうしても京浜東北線が最後にならざるを得なかった」と工事担当者は説明する。

山手線ストップはまたある?

東京の大動脈、山手線をストップさせ、影響人員は約56万人に及んだとみられる大工事。だが、山手・京浜東北両線の線路移設が完了したことで、高輪ゲートウェイ駅関連の工事はヤマ場を超えた。

品川駅コンコースで山手線の運休を知らせる係員(撮影:大澤誠)

駅名には今も賛否両論あるものの、来年春には1971年開業の西日暮里駅以来、49年ぶりとなる山手線の新駅が誕生することになる。

山手線では高輪ゲートウェイ駅新設のほかに、渋谷駅でも大規模な改良工事が進む。同駅の工事に関しても「検討中だが、山手線を運休して工事を行う可能性もないわけではない」と関課長は語る。

「首都の顔」をストップさせての大工事は、東京という都市が大きな変化を遂げている最中であることの象徴かもしれない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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