国の失策のツケ…JR北海道「値上げ」に異論噴出 公聴会で反対意見、島田社長「ご理解を」
JR北海道の経営は極めて厳しい状況が続く。2017年度の線区ごとの収支は北海道新幹線を含む全27線区が赤字で、うち13線区で前年度より赤字幅が拡大。2019年3月期の純損益は過去最悪となる179億円の赤字だった。値上げによって、乗客が減る影響も想定したうえで40億円の増収を見込む。
公聴会では、値上げの申請者であるJR北海道の島田修社長による申請の理由や内容を説明。その後、一般公募による公述人3人がそれぞれ意見を述べた。
国交省鉄道局によると、鉄道の運賃改定は事業者が国交省に申請し、国土交通大臣が運輸審議会に諮問、審議結果の答申を受けて認可する。公聴会を開くかどうかは審議会の判断による。公述人3人はいずれも反対意見だったが、これは申し込みがこの3人のみだったためだという。
島田社長は公聴会の冒頭で、今後も鉄道の競争力を維持するためのサービス向上と、利用の少ない線区を持続的に維持するために「お客様にコストの一部をご負担いただきたく、運賃の改定を計画した」と説明。20年以上にわたって実質的な値上げをしなかったことについても触れ、「徹底した経営努力を行うことを前提に負担をお願いする」として理解を求めた。
苦境の原因は「国鉄改革」
これに対し、公述人3人はそれぞれの立場で反対意見を述べた。
市民団体「安全問題研究会」代表の地脇聖孝さんは「JR北海道の経営が苦境に追い込まれた根本原因は、そもそも旧国鉄を分割した際の切り分け方」にあると強調。JR7社の営業収入全体に占めるJR北海道の割合は発足当初の1987年度でも2.5%にすぎず、その後の低金利政策によってJR北海道・四国・九州各社に交付された「経営安定基金」の運用益が減る一方、本州3社は旧国鉄の債務負担が軽くなることで利益が増加し、より格差が広がったと指摘した。
そのうえで、「企業努力の範囲を超える格差に関しては、その是正のための制度を導入することこそ国として行うべき政策」であるとし、是正の努力が不十分な現状での運賃値上げに反対せざるをえないと述べた。また、北海道産の農産物の多くが貨物列車で道外に輸送されており、全国が恩恵を受けていることから、北海道の鉄道を維持するための費用は全国で負担すべきとも主張した。
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