日産が懸念するゴーン保釈後の「時限爆弾」 逮捕から108日、3度目の請求でようやく保釈
日産は現在、規模拡大を追い求めた「ゴーン流経営」からの脱却を急いでいる。特に北米ではここ数年、ゴーン氏の指示で採算より販売シェア拡大を優先してきた結果、収益性が急激に悪化。昨年前半からブランド重視の戦略に転換した。その北米トップを務め、業績悪化の「戦犯」と言われながらもゴーン氏に重用され続けたホセ・ムニョス氏は今年1月、会社を追われた。今後もゴーン氏の息がかかった幹部を駆逐する流れは続くとみられ、日産の「脱ゴーン」化は着々と進んでいくだろう。
その一方で、ゴーン氏の影響が完全に払拭されたわけではない現実もある。4月8日に予定される臨時株主総会まで、ゴーン氏には日産の取締役としての地位は残っている。ルノーでも取締役のままで、ゴーン氏が各社の取締役会への出席を希望するかどうかは大きな注目点だ。
裁判所が示した保釈条件の中でも、「裁判所が許可すれば取締役会への出席は可能」(弁護人の弘中惇一郎弁護士)とされている。その場で、日産の現経営陣に対する批判を本格的に展開していく可能性も否めない。ただ、保釈条件では事件関係者への接触も禁止されており、そこには日産の西川廣人社長ら現経営陣も含まれるとみられ、裁判所が出席を許可するハードルは高い。
内幕を暴露する可能性も
それ以上に日産などが恐れる最悪のシナリオは、ゴーン氏が国内外のメディアを集めた記者会見を開くなどして、社内での権力闘争の内幕を暴露することだ。ゴーン氏が退任後に受け取る報酬額が記載された書類に日産の西川社長がサインしていた疑惑が一部で報じられており、報酬虚偽記載に関する起訴内容に日産幹部が関与していたとゴーン氏が断言すれば、日産へのダメージは大きい。
知人への巨額送金や世界各地での豪華住宅の購入などについても、複数の日産幹部がその内容を事前に承知していたなどと具体的に証言する可能性もある。ゴーン氏は経営者として世界的な知名度があり、解任されたとはいえその発信力は侮れない。
また、日産が検察へ告発したことについて、西川社長らによる「クーデター」を主張する可能性も懸念材料だ。ルノーとの経営統合に傾いたゴーン氏を排除し統合を阻止するため、日産経営陣がゴーン氏の「不正」を利用した――。経営の全権を掌握していたゴーン氏が経緯を詳細に語ればそれなりの説得力を持つため、クーデター説を全面否定する日産側のシナリオを崩しかねない。
刑事裁判では最高裁まで争えば、終結までに数年間を要する可能性が高い。日産にとっては経営統合や出資比率など提携関係見直しを巡り対立が続くルノーだけでなく、すでに切り捨てた元トップとの間でも大きな火種を抱え続けることになる。
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