ファーストリテイリング柳井会長兼社長「世界一のアパレル製造小売りに」、ユニクロのグローバル化をあらためて宣言(上)
「2020年ファーストリテイリングは、世界一のアパレル製造小売業グループになる。これがわれわれの夢です」。3日にファーストリテイリングが開いた事業戦略説明会で、柳井正会長兼社長は、開口一番こう切り出した。
毎年9月上旬に行われるこの説明会は、柳井会長兼社長が前期の振り返りと今期の戦略について説明するのが通例だったが、今年はやや趣きが異なる。「経営に対するおもい」と題し、ファーストリテイリングが日本発のグローバル企業になるためのビジョンを語った。「H&Mの出店(9月13日銀座に初出店)によってZARAもGAPも世界大手がすべて日本にそろう。いわば今年は開国元年。それならばわれわれも世界に出て行くことを宣言する時期だと考えた。いろんな数字のことよりも、今後10年間の方向性を示したかった」(柳井氏)。
「グローバル化」は数年前からファーストリテイリングが掲げているキーワードだ。そのために、欧米に旗艦店を出店したほか、中国や韓国に積極出店を進めてきた。その方向性は変わってはいない。今後は新たに、09年秋パリに旗艦店、09年春にシンガポール出店を行うほか、ロシアやインドへも早期の出店を決めた。
前08年8月期のユニクロ事業は、国内4592億円、海外300億円の合計4892億円(会社見通し)。これを2010年8月期に、国内6000億円、海外1000億円の7000億円にまで引き上げるのが目標。だが、この目標を達成するには、国内で年率15%、海外で80%伸ばさなければならない。店舗数でいえば、現在国内750店、海外50店のところを、国内800店、海外は約150店にまで増やす必要があるのだ。
国内での成長は、大型店の効率化にかかっている。07年8月期に大型店の本格出店を開始して、1坪当たり月商17万円から、前08年8月期は21万円にまで向上した。これを2010年8月期には25万円にまで引き上げる計画。そのために、女性向け商品の品ぞろえは欠かせない。この秋も「スリムボトムス」という女性向けパンツを600万本販売する計画を立てているが、現在40%強の構成比率を60%に引き上げる。
また、今後は生産もグローバル化を図る。将来的には全生産量の約3分の1が中国以外での生産になるよう、体制を整えるという。ベトナムでの生産規模を拡大するほか、バングラデシュ、インドでの生産も本格的な検討に入った。
ファーストリテイリングは、07年8月期を減益で着地した。一転して前08年8月期は、消費低迷で業界他社が軒並み苦戦するなか「ヒートテックインナー」や「ブラトップ」などヒット商品を連発し、ユニクロ事業が非常に好調に推移した。柳井氏は「前期は、われわれが世界中で売るのはファッション性のあるベーシックだ、という方向性がハッキリ見えた年だった」と振り返る。
また、前期は柳井氏自らが営業本部長のような役割を担い、業績回復に向けての先頭に立った。ユニクロ事業の復活が実現した今、次の課題は国内関連事業の再建達成だ。9月1日に、低価格衣料のジーユー、婦人靴のビューカンパニー、靴のワンゾーンの関連事業3社を統合して「GOVリテイリング」とし、再出発を切った。「新規事業として全部変え、第2、第3のユニクロを作り上げる」(柳井氏)。なお、婦人服のキャビンはブランドを集約し、「5年以内に日本一の婦人服チェーンにする」と息巻いている。
(下に続く)
【堀越 千代記者】
《東洋経済・最新業績予想》 (百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益 連本2007.08 525,203 64,963 64,604 31,775 連本2008.08予 585,600 80,100 79,100 41,100 連本2009.08予 640,000 87,000 87,000 45,000 連中2008.02 316,401 54,274 53,436 28,640 連中2009.02予 350,000 58,000 58,000 30,000 ----------------------------------------------------------- 1株益¥ 1株配¥ 連本2007.08 312.0 130 連本2008.08予 403.5 130 連本2009.08予 441.8 130 連中2008.02 281.2 65 連中2009.02予 294.5 65
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
(写真:尾形文繁)
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