ドラマ「CRISIS」、新幹線格闘シーンの舞台裏 N700系リアル車内はどうやって撮影したか

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本物そっくりの車内セットには驚かされたが、走行シーンでは一点だけ気になる部分があった。非常ブザーが押され、新幹線が橋の上で緊急停止するシーンだ。

鉄橋を疾走する新幹線。橋の上で緊急停止はOKか(写真:T2 / PIXTA)

JR東海によると、以下のようなプロセスとなる。「旅客が非常ブザーを押した場合は、運転士はすぐにブレーキをかける。ただ、高速走行する新幹線はブレーキをかけてから停止するまでに若干のタイムラグがあるので、その間に車掌かパーサーに車内の状況をPHS等で報告してもらう。火災の危険がある場合は、トンネル内や橋の上を避けて停止します」。つまり、この手順どおりであれば、非常ブザーが押された理由として、車掌かパーサーが運転士に車内で格闘戦が起きていることを報告しているはずだ。

緊急停車は運転士のナイス判断?

なお、「改造車を含むN700Aタイプの車両については、非常ブザーを車内防犯カメラと連動させ、ブザーが押されたときには何が起きているかを運転士はすぐに把握できるようになっています」(JR東海)。だとすれば、運転士は非常ブザーが押された後に、防犯カメラで車内の様子を見ていたことになる。

本来、車内で爆発の危険があれば橋の上で停止してはいけない。にもかかわらず運転士が橋の上で停止したのは爆弾に気づかなかったからなのか、あるいは車内の様子を防犯カメラで確認した結果、一刻を争うと判断したからなのか。結果的には運転士のナイス判断だった。

このドラマのコンセプトは「国家を揺るがす規格外の事件に立ち向かう、規格外の男たちの活躍を描く!」だ。新幹線のアクションシーンも間違いなく規格外の迫力だった。鉄道を使ったアクションシーンが今後も描かれるかはわからないが、ぜひ視聴者の度肝を抜くようなアクションシーンをまた放映してほしい。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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