瀕死の福田政権。だが新体制の姿は見えない
長期的な改革の課程での避けがたい混乱
ガソリン税の例を見てみよう。小泉純一郎元首相はガソリン税を特定財源から一般財源に組み替えようとして失敗した。福田首相は道路財源の一部を一般財源化する方針を表明した。3月中旬、福田首相との会談で古賀誠党本部選挙対策委員長は、民主党との妥協案に「必要な道路建設は着実に実施する」との文章を付け加えるように主張した。また谷垣禎一政調会長も古賀氏を支持し、「文言が付け加えられなければ、自民党は生き残ることができない」と主張したと伝えられている。谷垣氏は“財政タカ派”として知られるだけに、この主張は意外なように思える。しかし、この事実こそが自民党の政策マヒの現実を示しているのである。
福田首相の後任の最有力候補として取りざたされているのは麻生太郎氏である。同氏は郵政民営化で反旗を翻した平沼赳夫氏の支持を得ている。一方、小泉元首相に近い人物は与謝野馨氏を候補者に挙げ、与謝野氏は小泉改革を復活させることができると主張している。
与謝野氏は、典型的な利益誘導型の自民党議員から、都市の中産階級を対象にした経済政策を主張する指導的な政治家へと変身を遂げている。しかし、同氏は官僚の力の復活を図った過去の人物でもある。小泉内閣で経済財政担当大臣に就任した与謝野氏は官僚寄りの行動をとった。そのため小泉元首相は後任の安倍晋三前首相に与謝野氏を閣僚から外すようにアドバイスしている。
他方、民主党も有力な対抗馬を出せないでいる。福田首相が不人気だからといって民主党の人気が高まっているわけではない。それには理由がある。民主党は新しい政策ビジョンを示すのではなく、倒閣に憂き身をやつしているからである。したがって国民が自民党も民主党も“どっちもどっち”という見方をしているのもうなずける。だからといって悲観的になる必要はない。改革とは一進一退でなされるものだ。
現在の政党では日本の問題を解決できない。そのことが政治の再編成を促すことになるだろう。経済改革を実行できるような政治システムを構築しないかぎり、日本は政治的な安定や順調な経済成長を実現することはできないのだ。日本はそうした方向に向かって進んでいる。旧体制は死につつある。だが、新体制の姿はまだ見えていない。
(リチャード・カッツ 週刊東洋経済特約(在ニューヨーク) 撮影:尾形文繁)
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