ランサムウェアは何カ月も潜伏するのがフツー《アスクルとアサヒGHDへの「サイバー攻撃」》対策していたのに被害・・・どこに隙があったのか

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ランサムウェア被害を前提に、「どのシステムが止まったら、誰が何をするのか」「代替手段は本当に使えるのか」を、平時から訓練しておく必要があります。紙の上の計画だけでは、いざというときに役に立たないのです。

形だけの対策から、実効性のある運用へ

アスクルは今後、NISTフレームワークに基づくセキュリティ強化など、教科書的とも言える対策を進めるとしています。これ自体は正しい方向性です。

しかし、アサヒGHDの事例が示すように、フレームワークに沿っていることと、実際に守れていることは別問題です。

アサヒGHDでは、NISTフレームワークに基づくセキュリティ対策を行ったとしているだけでなく、セキュリティベンダーの外部評価を受け、さらにペネトレーションテスト(外部からの第三者模擬侵入テスト)まで行っていたということを忘れてはなりません。形だけの対策にならないことを肝に銘じるべきです。

両社の事例から見えてくる共通点は明確です。

「対策は取っていたが、運用が伴っていなかった」
「ランサムウェア被害を本気で想定していなかった」

この2点に尽きます。

サイバー攻撃を完全に防ぐことは難しいでしょう。しかし、早期に侵入を発見し、被害を最小限に抑え、事業を立て直す力は備えることができます。アスクルとアサヒGHDの事例は、その現実を私たちに突きつけています。

ランサムウェア対策とは、最新のツールを導入することではありません。日々の運用と、「最悪を想定する覚悟」こそが、本当の対策なのです。

東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティーの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。
森井 昌克 神戸大学 名誉教授

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もりい まさかつ / Masakatsu Morii

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年から2024年、神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。近畿大学情報学研究所客員教授サイバーセキュリティ部門長。国立研究開発法人日本医療研究開発機構プログラムスーパーバイザー。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。サプライチェーンサイバーセキュリティコンソーシアム(SC3)運営委員、同中小企業対策WG座長。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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