薬ではない「自分の細胞を使って髪の毛を取り戻せる」男性だけでなく女性にも光明、自然になじむ期待の"薄毛治療"最前線

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「"再生毛包器官原基"は、小さいけれど実際に髪を生やすという機能が備わっています。大きな臓器がこのステージに至るには、まだすこぶる時間が必要でしょう」と辻氏は予測します。

毛包はそもそも再生能の高い器官であるため、器官再生研究に向いていたという背景もあります。

「毛包は毛周期というサイクルをもち、前の髪が抜けると新しい髪が生えてくるという再生を前提とした器官です。胎児期に一度しか作られない大型臓器に比べ、構造的に再生しやすいことが、毛包が器官再生の先陣を切った理由といえます」

“毛髪のタネ”の作りかた、器官再生のしくみ

まず毛包上層のバルジ領域というところにある上皮性幹細胞と、下層にある間葉性幹細胞である毛乳頭細胞を接着して培養し、再生毛包器官原基、つまり “毛髪のタネ”を作ります。

“毛髪のタネ”の作りかた
(左)“毛髪のタネ”(再生毛包器官原基)は、上皮性幹細胞と間葉性幹細胞である毛乳頭細胞を組み合わせて作られる。(右)マウスに移植された“毛髪のタネ”から新生毛が伸びていく様子。ナイロン糸がガイドとなり、毛は自然な角度で皮膚の外へ出ていく(資料:オーガンテック)
辻 孝 オーガンテック 取締役会長 創業者
辻 孝(つじ たかし)オーガンテック 取締役会長、創業者/九州大学大学院理学研究科修了。07年東京理科大学基礎工学部教授。14年より国立研究開発法人理化学研究所 生命機能科学研究センター器官誘導研究チーム、チームリーダー。24年から現職。博士(理学)。現在、理化学研究所客員主管研究員、東京歯科大学客員教授を兼任。(写真:筆者撮影)

辻氏のグループはここに極細のナイロン糸を組み込み、新生毛が伸びてくる際、その糸がガイドとなって毛乳頭から皮膚表面まで自然に導かれるようにする繊細な技術も開発しました。

「この方法で密度や角度を制御できるようになり、より人の毛髪らしい自然な生え方になりました。マウスの背中から再生毛を生やしたのもこの技術があってこそです」

こうして、世界に先駆け毛包器官再生第1世代の技術が完成したのです。その後も研究は進み、発毛した毛髪の生着率を高めた第2世代、“毛髪のタネ”を“苗”まで育てておいてから移植する第3世代へと研究は発展。それぞれ28年、30年の実用化を目指しています。

そしてその研究過程ではバルジ領域の付近に毛包の再生を支える「第3の細胞」が発見されました。これは前出のもう1つの再生医療、細胞移入療法としても活用できることが徐々にわかってきました。詳細は26年に公表される見込みで、研究の行方に関心が集まっています。

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