薬ではない「自分の細胞を使って髪の毛を取り戻せる」男性だけでなく女性にも光明、自然になじむ期待の"薄毛治療"最前線

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毛髪の基本構造
頭皮から外に出ている部分を「毛幹」、頭皮の内部で毛幹を作っている器官を「毛包」といい、袋状になっている。毛包の上部にある「バルジ領域」という部分には上皮性の幹細胞が存在し、最下部に毛乳頭がある(資料:オーガンテック)

再生医療の中でも毛髪分野の進展はとりわけ早く、日本の技術は国際的にも高い評価を受けています。臨床研究は着実に進み、一部ではすでに治療として提供が始まっている技術も。今後何が可能になっていくのか、順を追って見ていきましょう。

今、毛髪再生医療には、大きく2つの方向性があります。1つは、細胞を移入して髪が育つための“土壌”を整える方法です。

毛が細くなる背景には「毛包」のまわりにある細胞の働きが弱まったり、成長因子が減少したりと、“土壌の劣化”が関係しています。そこで、自分の細胞を培養して頭皮に戻し、育毛サイクルを支えられる“土壌”に整えるのです。こちらの方法の1つはすでに日本で最も早い毛髪再生医療として実用化がスタートしています。

もう1つが、「毛包」を新しく作り出すアプローチです。髪を生やす器官である毛包を自分の細胞から採取して培養し、植毛技術を用いて移植するというもの。こちらは研究開発がさらに進み、いよいよ実用化が視野に入る段階に来ています。今回は、この分野のパイオニアである辻孝博士に話を聞きました。

毛包の器官再生、世界が注目した“毛髪のタネ”

「毛包は小さいながらも立派な器官です。器官とは複数の細胞が集まって1つの役割を果たす、いわゆる臓器のこと。毛包の再生が世界から注目を集めているのは、器官を再生する世界初の技術だからです」(辻氏)

再生毛を生やすことに成功したヌードマウス
マウスのひげの毛包から作った“髪のタネ”(再生毛包器官原基)を背中に移植し、再生毛を生やすことに成功したヌードマウスの写真(資料:オーガンテック)

2012年に辻氏の研究グループが毛包器官再生の成功を世に知らしめたのがこの写真。

最近ではiPS細胞などを用いた臓器再生の研究が世界的に進み、腎臓や心臓など細胞を臓器に近い形にすることも可能になりつつあります。

しかしまだ本来の臓器としての役割を果たせる状態には至っていません。そんな中、いち早く再生可能な道筋が見えているのが毛包です。

次ページ“毛髪のタネ”の作りかた──器官再生のしくみ
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