ノーベル賞・坂口氏の研究を支えた阪大&中外製薬の連携。文科省の支援終了後の臨床応用研究を中外が支援
Tレグに関する治療は、世界中で200件以上の臨床試験が進行中とされるほど応用範囲が広い。Tレグを減らす・機能を抑制する戦略、逆にTレグを増やす・強化する戦略の両面で治療開発が進められている。
Tレグを応用した治療法の一例が、「がん免疫療法」だ。がん細胞を取り巻く腫瘍微小環境において過剰なTレグ活性を抑えることで、免疫チェックポイント阻害薬の効果を高める戦略が検討されている。スイスのノバルティスファーマや米ブリストル・マイヤーズスクイブは、Tレグ制御を組み合わせた抗がん免疫治療の前臨床研究を進めている。
移植医療においても、臓器移植後の拒絶反応を抑えるためにTレグが用いられている。アメリカのケンタッキー大学やハーバード大学医学部では、患者由来のTレグを増幅・再投与することで、免疫抑制薬の使用量を減らす臨床試験が進行中だ。
さらにアレルギー領域では、Tレグの免疫抑制作用を利用して過剰な免疫応答を抑える治療開発が進んでいる。米GentiBioは、自分や他人のTレグを使ってアレルギーを生じさせる免疫異常を抑える技術を開発中だ。また、従来のアレルゲン特異的免疫療法でも、Tレグを増やすことで体の耐性を高める仕組みが注目されている。
日本でも、坂口氏らの技術をもとにした大阪大学発・創薬ベンチャーのレグセルが、Tレグ細胞を用いたアレルギー性疾患モデルでの治療効果を確認し、臨床応用に向けた研究を進めている。
感染症や炎症性疾患に関しても、Tレグは過剰な炎症反応を抑える役割がある。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)や重症敗血症などでTレグ活性を調整することが、免役システムが暴走する「サイトカインストーム」の抑制や組織損傷軽減に寄与する可能性が示唆されている。国内では、大阪大学や東京大学の研究グループが、炎症性疾患モデルにおけるTレグ治療の前臨床研究を実施している。



















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