会社にとって都合のいい組織・社友会を「経営のパートナー」とするJR東日本
これらの4編成はいずれもE8系だったことから、JR東日本は原因が判明するまで同系車両の単独運転を取り止めるとした。山形新幹線では一部区間や全区間で連日、上下合わせて30本以上が運休。運休期間は1カ月を超え、計25万人以上に影響した。また沿線の宿泊施設では少なくとも6000人分のキャンセルが出るなど、地元の観光業にも深刻な打撃を与えた。
そして7月22日、JR東日本はE8系の故障について「補助電源装置の半導体部分と制御基板の組み合わせが不適切で、想定以上の電流が流れて損傷したことが原因」と発表。対策を講じた上で、新庄―東京間で取り止めていたE8系の単独運転を8月1日から順次再開し、2日から通常ダイヤに戻すとした。
それと同時に、1カ月以上に及んだ運休で大きなダメージを受けた山形県への観光誘致策として、県内の旅行宿泊に利用できる5000円のクーポンの配布なども発表した。だがこの1カ月で、山形新幹線の利用は前年同時期と比較して8割以下に落ち込んでおり、お盆の臨時列車の本数も運行可能な車両の関係から5割程度に留まるため、回復効果は不透明だ。
これら運行トラブルの詳細については第1回を読んでいただくとして、ここで話を、E8系4編成に相次いで故障が見つかった6月17日時点まで戻す。
その2日後の6月19日、JR東日本の首都圏のある職場の掲示板に、以下の掲示物が貼り出された。「社友会連携協議会ニュース」という名称のそれは、社員らに次のように伝えていた。

〈東北新幹線宇都宮―那須塩原間 回送列車(E8系)が故障した事象〉
〈6月17日(火)に発生した本事象について、社友会から新幹線統括本部幹部に会社の考えを聴きました〉
その後は◆=社友会からの質問、○=会社側の回答といった一問一答が続くのだが、まるで労使間の団体交渉で交わされるようなやり取りだ。JR東日本の、ある労組幹部はこう語る。
「まさに、組合との団体交渉に先手を打つかのような内容です。社友会ができてからというもの、このニュースのように会社が、われわれとの団交より先に社友会に、労組への回答のような内容を伝達するケースが増えたのです」
今やJR東日本が実質的に、労組に代わる「経営のパートナー」として遇する社友会。この「最大の社員組織」が誕生した経緯について、改めて振り返っておこう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら