〈インタビュー〉2年目に突入した「新NISA」、キーマンが語る拡大への課題。日本証券業協会・日比野隆司会長に聞く
企業や学校への講師派遣や、証券会社との連携を密に進めていく。J-FLEC(金融経済教育推進機構)との連携も非常に重要だ。職場でNISAを普及すれば、口座数をもう一段増やすことは可能だ。
NISAを全世代向けに拡張する議論もある。現状は18歳未満はNISAの対象ではない。NISAを活用していないシニア層もいる。このあたりの制度が整えば、目標達成に近づいていくだろう。
――国はこどもNISAや高齢者向けのプラチナNISAの創設を検討しています。対象となる金融商品の拡大も必要でしょうか。
6月に政府が改訂した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では、具体的な商品は特に書かれていないが、(新NISAを通じて)幅広い世代に幅広い商品を提供する、というコンセプトが明記された。これから具体的な商品の議論が始まるのではないか。
メディアでは毎月分配型の投資信託に焦点が当たっているが、個人的には、必ずしも(新NISAから)排除する必要はないと思う。普通に考えると、「つみたてNISA」の枠には入らないかもしれないが。
――最近では、株式や債券といった伝統的な商品だけでなく、プライベートエクイティや不動産、プライベートデットといったオルタナティブ資産を扱う証券会社も増えています。
今は規模の大きい機関投資家や、投資経験のある個人に限定して販売されている。今後は投資信託のような形で小口化し、幅広く展開できる商品に仕上がるのであれば、そうすべきだろう。
ただ、一般的にそうした資産は流動性に欠ける。適合性原則(顧客の知識や経験、財産の状況などを考慮し、意向や実情に即して勧誘する原則)をしっかり踏まえた対応が必要だ。
市場はトランプ政権に耐性
――暗号資産の取り扱いも、議論の俎上にのぼっています。
金融審議会では(暗号資産を金融商品として位置づける)諮問が出ている。金融商品取引法の改正が必要になるが、自主規制の対象外であり、コメントは差し控えたい。
もっとも、(投資対象としての)存在感が大きくなっていることは事実だ。アメリカの例を見ても、暗号資産は価格の動きが激しい。主要な投資対象とするにはボラティリティが高く、一般の投資家が簡単に取り扱えるかは議論の余地がある。税制の問題も絡んでくる。今後の議論を注視していきたい。
――トランプ関税ショックで落ち込んだ日本株は、足元では好調です。今後の見通しは。
4月2日のショックは一過性だった。驚くような政策は出てくるが、その後に修正されるという見方が市場に浸透してきたのだろう。トランプ政権への耐性が備わってきている。
関税で一番被害を被るのはアメリカ市場だと指摘されているが、米国株は最高値を更新している。欧州株も史上最高値だ。日本株も出遅れ感はあるが、日経平均株価が4万円手前まで戻ってきていることは、普通の状況だと思う。
では日経平均が史上最高値である4万2000円台まで行くかというと、輸出関連の不透明感は(最高値を更新した欧米に比べて)日本の方が強い。相互関税の一時停止の期限である8月1日までにリーズナブルに決着すれば、不透明感が払拭される。マーケットにとっては好材料であり、最高値にチャレンジするベースが整うのではないか。
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