「be動詞や四則演算を教える」大学は不要という誤解、"リメディアル教育"の本質 定員割れの大学が学力ない子を受け入れてる?
小学校や中学校で学ぶ内容を教えるような大学は不適切だ、と批判したくなる気持ちはわかりますが、こうした大学がなければ、四則演算が怪しいまま社会に放り出される若者が増えることにもなりかねません。もしこうした大学を潰したら、社会全体がよくなるどころか、むしろ事態は悪化するでしょう。
あるいは高校までの卒業条件を厳しくすれば、大学がリメディアル教育を行う必要はなくなるのかもしれませんが、それはそれで高卒資格を得られない若者の増加を招くことに。問題が大学から高校段階に移るだけになってしまいます。
補足すると……リメディアル教育は「定員割れの大学がやっている取り組み」だと思われがちですが、実際には国公立大学や難関大学でも実施されています。例えば、経済学部に入学した学生が高校で数学を十分に履修しておらず、経済学で必要とされる数学的思考や統計知識に対応できない、なんてケースは以前からありました。
また日本では、高校の早い段階で文理選択や履修科目の選択をさせるケースが多いですが、そうなるとどうしても数学や理科、社会科などでも基礎学力のバラツキは生まれます。こうしたギャップを埋める役割も、リメディアル教育は担っています。必要な内容を大学であらためて基礎から学べる仕組みは、多くの学生にとってメリットがあるはずです。
それに、誤解されているケースもありそうですが、リメディアル教育の科目だけを履修していても大学は卒業できません。卒業要件を満たすためには、専門科目などの単位が数多く必要です。リメディアル教育はそこに向けた橋渡しの仕組み。出口の水準を下げるのではなく、入り口を通りやすくするためのものです。
リメディアル教育は単に「できない学生」のための教育ではありません。多様化する大学の中で、それぞれの学生が自分の興味・関心に基づいて専門的な学びへと進むために必要なステップです。
大学が学生の学びを支え、専門性を深める手助けをするリメディアル教育は、現代の高等教育において、きわめて重要な役割を担っていると私は思います。こうした大学の変化を、多くの皆様に知っていただきたい、と思う次第です。
(注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)
執筆:進路指導アドバイザー、追手門学院大学 客員教授 倉部史記
東洋経済education × ICT編集部
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