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トランプとマスクを隔てる「埋めがたい溝」の正体、2人の思想・哲学の違いはどこにあるのか

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同じ4日の午後、ドイツの首相と共同記者会見を開いていたトランプ大統領は、「マスクは法案の電気自動車に対する税額控除の段階的廃止が気に入らないのだろうし、政権を離れて寂しくて攻撃的になっているのだろう」とコメントした。

マスクはすぐさま、「法案は見ていなかった。自分がいなければトランプは選挙で負けており、民主党は下院で多数を獲得しただろう、恩知らずめ」とポストした。そして「8割の中間層を代表する政党を作るべきか」という質問への回答をXで募った。

するとトランプ大統領は、自身のSNSで再度、マスク氏の不満は法案の電気自動車(EV)政策の縮小のためだと主張。「歳出を削減するにはマスクへの補助金や契約を打ち切るのが早い」とポストした。

対してマスク氏は、「以前からEVにもその他の車にも税額控除は必要ないと言っていた」とかつての自身のコメント動画を掲載。契約打ち切りもやれるものならやってみろと挑発した(NASAに対して宇宙への運搬手段を提供しているスペースXの2024年度の政府契約は38億ドルにのぼる)。

さらに、マスク氏はトランプ大統領の関税は「下期の景気後退を招くだろう」とポスト。それにとどまらず、ジェフリー・エプスタイン(少女買春を斡旋していた罪を問われた億万長者、故人)とトランプの関係を仄めかす動画を投稿した。

マスクとトランプ大統領がホワイトハウスの執務室で会見を行い、政府効率化省(DOGE)の任務にいったん区切りをつけるという和やかな会見を行ったのは5月30日のこと。その際にもトランプ大統領は、「イーロンは辞めるわけじゃなくて、これからも行き来すると思う。DOGEは彼の子どもだし」と発言し、マスク自身もDOGEのミッションはこれから始まると言っていた。

関係修復は困難

全米どころか全世界が息をのむ展開に、かつて2016年の大統領選を戦ったが今は忠実なトランプ支持者であり、マスク氏の友人でもある共和党のテッド・クルーズ上院議員は「早くパパとママが喧嘩をやめてくれたらと思っている離婚協議中の夫婦の子どもの気持ちだ」とコメントしている。

一方のトランプ大統領も、今回はさすがにこたえたようだ。

ワシントン・ポスト紙によれば、周囲にはマスク氏の薬物使用について不平をこぼす一方で、落ち着いて対応をするように指示しているという。またJ.D.ヴァンス副大統領には、「煽らないように」と指示があったことを本人が騒動当日収録のテオ・ヴォン(アメリカのコメディアン、ポッドキャスター、俳優)のポッドキャストで明かしている。

この先、時間をおいて、再び2人が多少距離を縮めることはあるかもしれない。ただ今回のトランプ大統領の目玉政策への突然の攻撃は陣営には大きなリスクと判断されるだろうし、これまでのような蜜月関係に戻ることはもうないだろう。

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