ところでもう1つ、英国経済に逆回転を及ぼす左派政策がある。それは化石燃料の利用の削減だ。
北海油田がある英国は産ガス国であるが、労働党政権は石油・ガス会社に対する超過利潤税(ウィンドフォール税)の引き上げを断行し、同産業に対する実効税率を世界最高水準まで引き上げた。あくまで脱炭素化を優先するというのが労働党の立場だ。
一方で、アメリカでは化石燃料の利用に積極的なドナルド・トランプ氏が、2025年1月20日に大統領へ返り咲く。その結果、ただでさえ欧州や日本に比べると低いアメリカの天然ガス価格は、今後は一段と低下すると予想される。
産ガス国のメリットを生かせない英国
つまり、アメリカではエネルギーコストの低下を通じた生産性の向上が図られるわけだが、産ガス国である英国はそれと真逆の道を行く。
現在、欧州とアメリカの天然ガスの価格差はおおむね6倍程度と、液化天然ガス(LNG)に依存する日本と同様だ。最悪期である2022年前半の7倍強よりは低下しているが、それでもなお、価格差は大きい。英国のガス価格も大陸のガス価格に連動するため、似たような価格差だと考えていい。今後はこの格差がさらに拡大することになるわけである。
そもそも英国は、2008年に生じた世界金融危機以降、生産性パズル(主要国の中でも生産性が伸びないという構造問題)を抱えている。日本でも生産性の伸びが低いという議論があるが、英国はそれ以上に深刻だ。
要するに、スタグフレーションに突入する前より、英国では生産性の改善が必要だったわけだが、これがますます遅れることになる。
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