【対談前編】これからは"社会のため"を考えられる子どもにチャンスが来る 親は子どもを枠に閉じ込めたり先回りしないで

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

田内:本来、子どもは失敗や実験を繰り返しながら学んで成長していくものです。しかし、最近は「子どもに失敗させたくない」という親も多いですよね。親自身も傷つきたくないという気持ちがあって、先回りしてしまうように感じます。失敗を経験せずに大人になってしまうため、社会に出てからも過度に失敗を恐れてしまうのでしょう。

髙宮塾でも、親が「うちの子はこういう子なので」とおっしゃることは多いです。「未熟で幼いので」とか「競争が得意ではないので」と決めつけて、挑戦させずに枠に閉じ込めてしまう。塾は受験本番のリスクを減らすためにあるので、本番までは多少失敗させて、リスクとの向き合い方も学んでいってほしいです。そもそも子どもには、親に見せる姿と外で見せる姿とで違う部分があります。親も意識を変えていく必要があるでしょう。

信頼関係を築く力は大人になるほど大事

田内:子どもたちには、私たちの希望を託しています。彼らには、私よりよほど可能性があるからです。私も「この社会をどうにかしたい」と考えていますが、大人が考えるよりもいい答えを持っているはずです。

この数十年で、年功序列・終身雇用が崩れ始め、働き方は大きく変わりました。リーマンショックで多くの社員が解雇され、「いい会社に入れば一生安泰」という時代が終わったのです。最近は国にも体力がなく、年金でさえ守れません。上の人が考えて守ってくれるという、ローリスクハイリターンの世の中はすでに幻想です。会社は社会のためになってこそ儲けがでますから、一人ひとりが社会のためになることを考える必要があります。逆に言えば、そうしたことを考えられる人が重宝され、チャンスをつかめる時代だと思うのです。

髙宮外資系企業は、「すごいと思ったら採用、ダメだったら辞めさせる」と、人を雇用するのも解雇するもハードルが低い印象です。しかし日系企業は「迷ったら採るな」が鉄則で、逆に一度採用した人を辞めさせるのはとても難しい。ポテンシャルがあったかもしれない人を逃す一方で、社内にパフォーマンスが悪い人がいても雇い続けるしかありません。当然、優秀な人は「なぜあの人が自分と同じ給料なのだろう」と不満を抱いて去ってしまいます。

田内:かといって、企業がむやみに人を解雇しやすくなるのもよくないですよね。それなら同時に、解雇された人たちのセーフティネットを張らなければなりません。

髙宮はい。私も日本企業が外資系企業のようになればいいとは思いません。ただ、日本は減点主義で採用しますよね。いわゆる学歴がなくても見込んで採用した場合、後々問題があった際に「なぜこの学歴で採用したんだ」と思われてしまうのです。

髙宮 敏郎
【写真左】 髙宮 敏郎(たかみや・としろう)
SAPIX YOZEMI GROUP共同代表
1974年、東京都生まれ。1997年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)に入社。2000年、学校法人高宮学園代々木ゼミナールに入職。同年アメリカ・ペンシルベニア大学へ留学し、教育学博士(大学経営学)を取得。帰国後、財務統括責任者を務め、2009年より現職。学校法人高宮学園代々木ゼミナール副理事長、株式会社日本入試センター代表取締役副社長も兼務。「教育はサイエンスであり、アートである」をモットーに、これからの時代を担う子どもたちの教育を支える活動を行っている

最近つくづく、「人を信頼すること」「人に信頼されること」の大切さを感じます。数十年ぶりに再会した友人でも、「こいつは昔から頑張っていたよな」という記憶があると、すぐに打ち解けて信頼できるのです。大人になってからも、お互いにリスペクトできる関係を築くことは非常に大切です。そのためにも子どものうちから、誰かと信頼し合う経験は大切だと思います。子どもたちには、頑張って成長すること、そしてその時間を誰かと共有して過ごすことをしてほしいです。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事