求人倍率「バブル期超え」の高校卒就職、旧態依然の就職システムの深刻な問題 外部との連携を前提にしたキャリア教育が必要
では、高校卒者が短期離職せず、生き生きと働けるようにするにはどうすればよいだろう。
「私たちの調査では、1社だけを見て就職するより、たくさんの会社を見て悩んだうえで納得し、就職した高校生のほうがその後のキャリアは幸福になっています。つまり、就職活動の仕方によってエンゲージメントが大きく変わってくる。
一方、高校の先生はキャリアづくりの専門家ではありませんが、生徒一人ひとりの個性やバックグラウンドを把握し、進路を指し示すファシリテーターになり得る唯一の仕事です。例えば、学校の先生を起点として、キャリア教育に継続的に伴走できる外部人材を学校教育の場に招く。また、地域企業と連携して生徒が企業や仕事に接し、検討する機会を提供していくのです。
地域企業にとっても、大手企業と賃金格差が開いていく中で確実に採用していくには、インターンシップや職場見学の受け入れ、探究学習への協力などで高校と長期的に連携していくことが採用の種まきになるでしょう」
神奈川県田奈高等学校の包括的なキャリア支援体制
高校入学以前に思うように力を発揮できなかったり、家庭環境や経済的に困難な状況にあったりする生徒の学び直しを後押しするクリエイティブスクール、神奈川県立田奈高等学校では、在学中から卒業後までを見据えた包括的なキャリア支援体制づくりに取り組んでいる。
同校では1年次に職業インタビューや職業ガイダンス、2年次に進路に関する情報収集や職場体験などを実施し、3年次に自分の関心や個性を生かせるような進路目標を設定し、その実現のための方策を考え、実践していく。
クラス担任が中心となって生徒の個別相談・面談を行うとともに、スクールキャリアカウンセラーやNPO法人、地域サポートステーション、地域の経営者組織などと連携し、教員だけではカバーしきれない部分はその力を借りながら支援を進めている。
また、「田奈Pass」という支援機関もあり、卒業後も仕事や家庭の問題など、地域のサポートステーションにさまざまな相談ができるようになっている。
古屋氏によると、1年生や2年生の段階から週単位のインターンシップを提供するような高校も出てきているという。
「高校の就職支援の取り組みを見ていると、外部の人とのつながりにポイントがあると感じています。先生は生徒の個性や特性を把握してファシリテーション能力を生かし、どんな外部人材と組めば個々の生徒たちの人生がよりよくなるのかという観点で、どんどん外部の人を頼っていただきたいと思います」
参照:リクルートワークス研究所 「高校に聞く。キャリア教育と就職指導 Casefile.2 神奈川県立田奈高等学校」
(文:宮内健、注記のない写真:pearlinheart / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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