データ復元は困難?「不正の証拠隠滅」はこう防ぐ 企業が理解すべき「データ消去」の恐ろしい損害
社員が不正を働き企業に損失を与えた場合、残念ながら証拠がなければ企業は泣き寝入りするほかありません。「証拠が不十分だから、弁護士が受任してくれない」というお悩みも多いです。前述のように証拠となるファイルやデータを消されてしまうと、被害者なのに助けてすらもらえないという悲劇が起こるのです。
もちろんデジタルフォレンジック調査によって裁判で有効な証拠が見つかる可能性はありますし、フォレンジック技術も進化しているのですが、実は消されたデータの復元は年々難しくなりつつあります。
本稿が悪者に参考にされるのは避けたいので、消されたデータを復元できるボーダーラインを明確に示すことはしませんが、部分的な消去にせよ、パソコンのリセットによる消去にせよ、最近の傾向としてはデータの復元は技術的に困難なのです。被害者である企業側としてはつらいところです。
損害賠償や長期の精神的圧力を負うリスクも
また、企業が想定すべきデータ消去に関するリスクは、証拠隠滅だけではありません。実際に私が相談を受けた事案をご紹介しましょう。
ある大手企業に勤務されていた方が、自ら命を絶たれました。その方の奥様は、ご主人が上司のパワハラメールなどに悩まされていたことをご存じでしたので、ご主人が自宅に持ち帰っていた仕事用のパソコンに証拠が残っているはずだと考えました。
パソコンを開いてみると、セキュリティの関係で中身が確認できず、会社のシステム担当に相談して対処をお願いすることに。ところが後日、あったはずのデータがすべてなくなった状態でパソコンを手渡されたそうです。
このときの会社によるデータ消去が故意だったのかどうかは定かではありません。しかし、奥様は「パワハラを隠すためでなければ、いったい何のためにデータを消したのか」と会社に不信感を抱き、会社に対して長期にわたり、バックアップデータをはじめ追加情報の提供を要求することになりました。その間、会社側のシステム担当者は、責められるような状況が続きました。
もし会社側の担当者が最初の段階でデータを消していなければ、こうした事態には至らなかったはず。一度消えてしまったデータが復元できないときには、厳しい追及を受けるだけでなく損害賠償などの金銭的な問題に発展することもありますし、精神的なプレッシャーも長期的に継続することになるのです。
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