「円安批判」するトランプ氏に伝えたい日本の実情 サービス赤字と対米投資で貢献する「仮面の黒字国」

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日本の対米サービス赤字は基本的に、GAFAMの提供する商品の「質」に由来しており、そこに日本が不公平と口を挟む余地はない(租税回避的行動を除けば)。なお、欧米主要都市に拠点を有する巨大な外資系コンサルティングファームに対する赤字も近年増えていそうだが、これについても日本が不公平を訴えることはない。

日米の貿易サービス収支を総括すれば、「自動車を売りつけられている」アメリカと「プラットフォームサービスを売りつけられている」日本という構図がある。

言い換えれば、アメリカが片務的な不公正貿易を強いられているかのような認識は実情に沿わず、サービス取引まで視野を広げれば、むしろ日本の赤字拡大傾向のほうがアップサイドはあるくらいだ。

実はアメリカに貢献している日本

とはいえ、トランプ氏にそのような正論は通じそうにない。

本来、いくらトランプ氏が円安批判を展開しても日米金利差が大きいまま放置され、日本全体の外貨需給構造が脆弱な現状では、円の対ドル相場がトランプ氏の満足いくまで円高になるのは難しい。

多額の対米貿易黒字を抱える日本の円安修正がままならない現実を前にトランプ氏が着想するのは「追加関税でこらしめる」という方向性だろう。もしくは、「それ(追加関税)が嫌なら対米投資を増やせ」といった第1次トランプ政権で見られた要求である。

だが、これまで何度も議論された話だが、日本はアメリカの雇用・賃金情勢に対して多大な貢献を果たしている国の1つであり、とりわけ自動車産業の直接投資が大きいことで知られている。製造業に限れば、日本が最大の貢献国になってきたという歴史もある。

図はほかならぬアメリカ商務省のデータだが、日本企業のアメリカ経済への貢献の大きさは議論の余地がない。

この点に関し、当時の安倍晋三首相がトランプ氏に正面から説いたこともあった。今後の政府・与党においても同様の働きかけを期待したい。

現状、日本企業による対外直接投資残高のうち最大のシェアを誇るのはいまだにアメリカ(34%)で、アジアは1990年代後半以降の猛追を経ても2023年時点で26.1%とこれに追いつけていない。

近年、アジアのシェアが低下傾向にあるのは、中国から他地域へ拠点の再構築が行われている影響であり、今後も続く公算が大きい。

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