「円安批判」するトランプ氏に伝えたい日本の実情 サービス赤字と対米投資で貢献する「仮面の黒字国」

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しかし、トランプ氏の円安批判には少なくとも2つの誤解がある。

まず、アメリカの対日貿易赤字は「34年ぶりの円安」に呼応して拡大しているわけではない。確かに、2020年からの3年間でアメリカの対日貿易赤字は拡大基調にあるが、第1次トランプ政権とおおむね同程度の約700億ドルである。

基本的に日本の自動車がアメリカで売れて、アメリカの自動車が日本で売れていないのは為替の影響ではなく単純に商品の「質」の差異を検討すべき話ではないのか。

なお、ここではあえて財・サービスの貿易収支で議論している。これは近年の日本ではサービス赤字におけるデジタル赤字が争点化しやすい状況を踏まえている。

自動車とデジタルの売りつけ合い

現状、日本のサービス赤字を地域別に見るとアメリカ、欧州、中南米に由来している部分が大きい。

中南米への支払いが膨らんでいるのは再保険市場が発達しており、保険・年金サービスを中心とする支払いで赤字が膨らんでいることの結果である。

かたや、アメリカや欧州はサービス収支赤字の中でも特にデジタル関連赤字の寄与する部分が大きい。アイルランドを中心としてGAFAMに象徴されるアメリカ巨大IT企業の拠点は欧州に置かれている実情がある。

つまり、対欧米で記録される日本のサービス赤字の多くは究極的には対アメリカ企業の赤字という理解もできる。

財貿易では負けていても(本来貿易は勝ち負けではないが)、サービス貿易では圧勝しているという事実をトランプ氏はおそらく軽視している。

むしろ、円安によって日本がアメリカに支払う各種プラットフォームサービスの代金は増え、サービス赤字(アメリカから見れば黒字)拡大に寄与している。この点はトランプ氏が理解できていない(あるいは理解していても見ようとしていない)もう1つの誤解と言える。

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